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『エクスタシーバージン』

byオゾン

「だからぁ! 一度でいいからエクスタシーを知りたいのっ!」
「へ?」
「あっ、わたたっ・・・」
土曜日の午後。同級生の彼氏である雪久(ゆきひさ)の部屋に来ていた幸子(さちこ)は
察しの悪い彼に腹を立て、大声を上げてしまった。

 だが、彼女の相談したかった内容を察しきれなかったのは、別に彼だけが悪いのではない。
幸子はこういう時の説明が異様に下手なせいもあるのだ。
『ほら、女の子って・・・その、色々体験する事があるでしょ?』
『女の子のカラダって、みんながね?同じ感覚を知ってる訳じゃなくってぇ・・・』
決して本筋にたどり着かないこんな堂々巡りの話では、雪久が判らないのも仕方ない。

しかし今の一言は実に不用意だった。高2の娘が大声で叫ぶ内容ではないし
それに、たびたびHするような仲とはいえ、こういうあからさまな単語を
日常で使うのに、まだ二人は慣れてなかったのだ。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
気まずい沈黙の空気。男の子らしい飾りっ気の無い部屋の中
壁掛け時計の小さな秒針だけが聞こえ、静かな午後の風がゆらりとカーテンを揺らす。
『ぅみゅぁ〜』
彼のひざの白猫が、退屈そうに小さく鳴いた。

 静止した時の中で雪久は思い悩んでいた。
今までの行為で、てっきり満足させてるもんだと思っていた彼にとって
幸子の口から出た叫びはちょっとショックだった。
が、ここでそのガッカリを表に出しては、ますます幸子を困らせるだけである。
雪久を傷つけないよう、今まで黙ってくれていた彼女に対し失礼だろう。

そんなこんなを思いながら、淡々と過ぎていく沈黙に限界のきた雪久が
なるべく平気なそぶりを見せ、話を切り出した。

「で、でもさぁ、今までだって・・・ほら、してる時の最後にエク・・・
 あー・・・その『イく』って言ったの、いっぱいあったじゃん」
だが、その問いに対し、幸子はもじもじとハッキリしない返答を繰り返すばかりである。
「うっ、あれは・・・その・・・」
「なに?」
「ほら、言葉で身体を導くっていう感じでぇ・・・・」
「?」
幸子は、困った顔で自慢の二つおさげの先っぽをクルクルねじっていた。
すっかりねじり癖のついたおさげが、指から離れるたびピョンッと小さく跳ねる。

 それからまた、延々と堂々巡りが繰り返されたのち
「あれはぁ! その、そういう風に言えば、イっちゃえるかな?って思ったのよぉ!!」
どうにも我慢できなくなった幸子が、またもや声を荒げたところでようやく話が進み出す。
「うわっ!声が大きいってサッちゃん。 今、姉ちゃんいるんだから!」
「あっ、ごめ・・・」
慌てて自分の口を手でふさぐ幸子。
学校でもどこでも、感情的になると大声を出してしまうのは、彼女の困った癖だった。

 その時、玄関先あたりからだろうか? 雪久の姉の声が階下から響いてきた。
「ユッキー!あたし買い物行ってくるから、後よろしく〜!」
「あ〜?ん、わかった〜」
間延びした声で一階へ返事をする雪久。
「ヤっとくんなら今のうちよ〜!あはは!」
「ねぇちゃんってばっ!」
ガラガラ締まる玄関に抗議の声はかき消され
スクーターのエンジン音がぱたぱた遠くに消えていった。

「・・・・・」
「・・・・・」
気まずい沈黙がまた始まる。
「あの、じゃ・・・お姉さんもああ言ってくれた事だし」
「え?あ、ああ」
何だか変な雰囲気だったが、しない訳にもいかないので二人は始める事にしたのだった。

              ◆

「ユッくん、あたし頑張るから!」
セーラー服をきちんとたたみ終えた幸子が、下着姿に似合わぬ真面目な顔をする。
「う〜む・・・気合い入れられてもなぁ・・・」
何だかなぁ、といった感じにつぶやき、ぽりぽり頭をかく雪久。

「じゃ、いくぞ」
「ん・・・・」
 触れるだけの、ソフトなキスからそれは始まる。
そして、いつも通りのくすぐるような撫で回しで、雪久は彼女の肉体を攻めていく。
H本のテクニック講座そのものの、弱く優しい指使い。
「はぁっ・・・・んっ・・・」
Bカップの乳房を撫で、背すじや脇腹をなぞり上げながら、彼が全身に優しくキスを
浴びせていく。とろとろと溶けていくような感覚に、幸子は恍惚の表情を浮かべた。

「んふぅっ!・・・あっ!そこっ、はぅん!」
ショーツを取り去った下半身の狭間へ、彼の舌先が触れた途端
幸子が悩ましげな喘ぎ声を高めて彼の頭をつかんだ。
「ここがいいんだろ?サッちゃん」
「うん・・・」
雪久は攻めを局部に集中させていく。指先でヒダを弄び、肉の洞穴に舌を差し入れ
火照ってとがる陰核を優しく撫でこすり、細かく舌で振るわせる。

「どぉ?イっちゃいそぉ?」
「んんぅっ!うん、なんか・・・高まってきた。あはァっ!」
快楽に没頭する幸子。居心地のいい場所を求めてゆらぐ頭の動きに合わせ
二つのおさげがダンスのようにゆらゆら揺れる。
うっとりと開いた彼女の唇が、つややかなピンク色に濡れていた。

 普段の雪久ならこの辺りで挿入し、1分もしないうちに
フィニッシュしてしまうのだが、今日は彼女の肉体開発が目的である。
ここで挿入して、すぐに終わってしまうのはまずいだろう。

色々と考えを巡らせつつ、彼は幸子を悦楽へと導いていった。
だが、精神と肉体はいつも同じ方向と向いているとは限らない。
『ぐぅうっ!充血しすぎて痛ぇ・・・』
ギンギンにたぎる股間をもてあましながらも、雪久は攻めに集中することで
獰猛に幸子へ入り込みたがる下半身の意識を抑え込んでいた。

ぬるぬると円を描いて淫核がこすられ、秘裂が更に蜜を溢れさせる。
「あっ!あふっ!すご、ぃ・・どんどん、良くなってくるぅっ!」
 いつもの、ぬるま湯のような穏やかな快感では無かった。
狭間の中心へ、熱した蜂蜜を休み無く注ぎ込まれているような
火傷しそうに強い快楽をそこに感じる。
やや感じてきた辺りで、いつも行為が終わってしまっていた彼女にとって
ここまで快楽が高まったのは初めてだったのだ。

「ごめんな。今まで、俺ばっかり気持ち良くなってたんだな」
「ううん。あたしユッくんが良ければ、あふっ!それでいいと思ってたから・・・」
「サッちゃん・・・よし、今日はいっぱい気持ち良くさせてやるぞ」
「うん・・・・」
愛おしい気持ちを指と舌に込め、雪久は彼女の亀裂に快楽を注いでいく。
今日、初めて体験する官能の高みに戸惑いながらも
少女は未だ知らない頂点に向け、じわじわと確実に登りつめていった。

「あっ、やっ!・・・なんか、きそぉ!」
ひくんっひくんっ、と両膝が震える。戸惑いと欲望が入り交じり
閉じたがっているような、開きたがっているような、微妙な動きを見せる。

そろそろだと判断した雪久が攻めを速めた。
つぷつぷと秘口へ差し入れる舌先の動き。
亀裂の上でぷっくり尖る小塔を擦り上げる指。
彼女を絶頂へと導く二つの悦楽を一気に加速させていった。
「あっ、あっ!いっ、イくぅっ!イっちゃうぅっ!」
快楽の高まりに合わせて幸子は腰をのけぞらせる。
大きく足を広げた秘裂の中心に向け、じゅんじゅん何かが集まっていた。
そして快楽の高まりに意識が耐えられなくなり、ふわっと力を抜いた時。

「あっ!ああっ〜〜〜〜!」
『ぷしゅうっ!』
激しいほとばしりが亀裂から噴き出し、彼の顔にしぶきをかける。
「あぅぅん!んふぅっ!んっ!んっ!」
そしてそれは数秒の間、彼の顔をぴちゃぴちゃ濡らし続けていた。
『え?おいちょっと待てよ?』
いつまでたっても止まらない滴りに、さすがに彼が妙だと気づく。
愛液にしては量も多いし、やけにさらさらと水っぽい感じがするのだ。
「ちょ、ちょっと!これ、オシッコじゃないのか?」
「あ、あれ?」
自分が噴き出させたものの正体に、幸子もそこでようやく気づいた。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あ、あは、ははは・・・・なんか、違ったみたい・・・・」
「あのね・・・・」
水びたしの顔のまま、雪久がジト目で彼女をにらんだ。

              ◆

 それから翌日の日曜日。両親と姉が外出した後の、二人きりの午後。
「ったく。あれから大変だったんだぞ。とりあえずミュンミュンがマタタビで酔って
 もらしたって事にしたんだから。おかげでこいつ、母さんに尻ぶたれてさ」
『ぅみぃ〜』
不満げに鳴き声を漏らす白い猫。
「あちゃ〜〜、ごめんねぇ、みゅんみゅん・・・・」
幸子は申し訳なさそうに謝りながら、あお向けになった猫の喉を撫で撫でしていた。

「そこでだ。今から二回目の挑戦、したいんだけど」
 ふいっと幸子が頭をあげて彼と視線を合わす。
が、戸惑いがちに頬を赤らめ、うつむいた顔をまたミュンミュンに向けた。
「もぉ、いいよぉ・・・・あたし、イけなくっても別にいいから・・・」
「そうはいくかよ。サッっちゃんがイけないのはオレのせいでもあるし。
 それに、イくんだったら一人より二人一緒の方がいいもんな」
「ん、そうだけどぉ・・・・でも・・・」

 察しが悪くて強引だけど、自分の為に一生懸命になってくれる雪久。
そんな彼が幸子は好きだったが、こちらの思いが伝わりにくいのがもどかしい。
猫の体をゆっくり撫でながら迷う幸子。迷いながらミュンミュンのしっぽを
自分のおさげにするように指先でくるくるねじっていた。

 いつまでも揺れる彼女の思い。もじもじし続ける幸子。
そんな彼女に『ええい!』とばかりに痺れを切らした雪久が、決めの台詞を口にした。
「・・・・・俺達、恋人同士なんだろ?」
普段の彼からしては、それは、かなりクサイ台詞だった。
口にした雪久自身もちょっと照れているのが幸子にも判る。

嬉しそうな困った顔で、幸子は更に頬を染めた。
そして、やや間をおいてから拒否の理由をぽつりと漏らす。
「で、でもぉ・・・・また、その、おもらし・・・・しちゃったら、困るし・・・」
「大丈夫、今回は風呂場だ」
自信たっぷりに、雪久がニヤリと笑った。

              ◆

 狭い浴室にシャワーの音が響いていた。裸のまま抱き合う二人からこぼれた水滴が
スポンジマットに落ちてパラパラ軽い音を立てている。
「へへ、お風呂でなんて初めて」
初体験の浴室でのHに、幸子は楽しそうに笑う。
「こら、オレは真面目なんだぞ」
「ふふっ、ごめーん」
彼女の笑顔を見ながら、雪久は昨夜姉が相談に乗ってくれた時を思い出していた。

『一人で性感帯探っても判るわけ無いでしょ?どこがいいのか言ってもらわなきゃ』
『漏らし癖かなぁ・・・ねぇ、一度お風呂でしてみたら?』
幸子との仲を冷やかしながらも、真面目に相談にのり
その上、二人の為に両親を外へ連れ出した姉に、彼が心の中で感謝をした。

「感じるとこがあったら、ちゃんと言ってくれよ」
「ん・・・」
 性感帯の探索が始まる。シャワーで身体を暖めた後、泡立てたボディソープを
ローション代わりにし、雪久が少女の白い肌を撫でる。
首すじや、可愛らしいヒップ、細い脇腹と、ももの内側。
Bカップの胸先に尖るピンクの乳首を親指の腹で擦り上げ
彼女を優しく攻めていった。マットの上で泡だらけの白い肉体が踊る。
「きゃはっ!やっ!くすぐったいっ!」
ぬるぬるする指が脇下を撫でた時、幸子はたまらず笑い出してしまった。
まだ性感帯が発達してないからだろうか。気持ち良さよりくすぐったい方が強いようだ。

「やっぱ舐めた方がいいのか?」
「うん・・・」
だが、狭いバスルームのため、二人が縦になる空間は無い。
仕方なく頭の向きを反対にした雪久が、寝そべる幸子の上にまたがった。
「やだぁっ、ふふっ」
幸子の目の前に垂れ下がる彼の肉棒。下半身の泡を流すシャワーを彼が揺らすたび
股間のそれがいきり立ったまま、彼女の視界でブラブラしていた。
「ちょっと・・・・あはは、やだぁ!」
「何が、やなんだよぉ?」
「だって、あはは!」
その揺れ具合が恥ずかしくて、可笑しくって、幸子は感じる方に集中できない。

「へへっ・・・・」
悪戯心がわいてきた彼女が、目の前でぶらつくモノを指でつついたり
吐息を吹きかけたりと、ちょっかいを出し始めた。

 ふと、いいことを思いついた幸子が濡れたおさげを指でつまむ。
そしてそのおさげを筆がわりにし、彼の肉棒をこちょこちょくすぐった。
「あっ、こ、こら!」
「へへー、気持ちいいんだ?」
筆先で撫でられるたび、びくっびくっと肉棒が反応し、硬さを増していく。
容赦なく幸子は彼を攻め続け、亀頭裏のへこみを毛先でつつ、と撫で上げた。
「うっ!やったなぁ!」
負けじと彼も幸子の谷間に舌先を這わせ、それは口技の攻め合いへと発展していった。

『ちゅく・・・ぢゅっ、ちゅるっ・・・・』
二人の唾液の音が浴室に反響し、陰部の淫らなすすり合いがしばらく続く。
「んっ・・・・んふっ!」
幸子は、昨日と同じ快楽の高まりを下半身に感じ始めてきていた。
が、普段と場所が違うせいだろうか?昨日のような強い盛り上がりが感じられない。
いくら続けても、ある程度以上からは官能が高まっていかないのだ。
『なんでよぉ?もぅ、あとちょっとなのにぃ・・・』
 ゴールは見えているのに、いつまでたってもたどり着けないような気分がもどかしい。
その足りない何かを補うように、幸子は夢中で肉棒を舐める舌を蠢かせていた。

「ちょ、ちょっと、先に出していいかな? 俺、我慢できんくなってきた」
口での愛技で先に根を上げたのは、雪久のほうだった。
昨日満足にできなかったせいもあり、既に股間のモノは発射寸前だったのだ。

「ねぇ、入れていいよ。イかせてあげる」
「え?いいのか?」
「うん、だって昨日あれからユッくん、そのままだったでしょ?
 してもらいっぱなしじゃ悪いし、お布団汚したおわびもしたいし」
誰かに貸しを作りっぱなしにしたくない性格は、幸子のいいところだった。
雪久も彼女のそういう部分が気に入っている。

「ははっ。じゃ、お言葉に甘えて」
「ま、せっかくだもんね」
マットにひじをつき、四つんばいになった幸子は
雪久が入れやすいようにお尻を突き出した。
「はい、どうぞ」
「おぅサンキュ・・・よっと・・・・くっ」
「んっ・・・・・」

 いきなり発射しないように注意しながら、彼はそれを少しずつ奥へと入れていった。
まだ膣穴での快楽を味わえない幸子にとって、秘肉をかき分け
『ズン』と響いてくる圧迫感は息苦しいものでしかない。
幸子は、内から迫るその奇妙な膨張感に目を閉じて耐えていた。

じわじわ奥へ貫いていき、ゆっくりと引きぬく。
また、じわじわ貫いては、ゆっくりと引きぬく行為を、幾度も繰り返す雪久。
「んんっ・・・・・・・ふううっ・・・・・・くぅ」
入れられるより、抜かれる時に味わえる息苦しさからの開放感が心地よい。
気持ちいいのかそうでないのか、中途半端なふわふわする気分を感じる幸子。
 そんな不安をかき消すため、彼女は人差し指に絡ませたおさげの先を
命綱にしがみつくようにきゅっと握った。

「そ、そろそろ出すぞ・・・」
「ぅん・・・」
今にも爆発してしまいそうなモノを、彼女の中からぬぷりと取り出した雪久が
きつく閉じられた彼女の太股の間にそれを差し入れる。
避妊具を持っていない彼らにとって、素股でのフィニッシュはいつもの方法だった。

『ティッシュは・・・いらないか。風呂場だしな』
雪久はそう考えると心おきなく腰の動きを加速させていった。
パンパンと荒々しい肌のぶつかる音が浴室に響く。
若さ特有の勢いだけの動きで、雪久はあるがままの欲望をそこにぶつける。
「うっく!いくぞ!」
「ん、いいよ・・・」
「ぐうぅっ!うっ!・・・・くうっ!」
彼が叫ぶと同時に、太股の間から先端だけをのぞかせていたモノから
白濁の粘液がビュビュッとタイルに吐き出された。
2度、3度とそれがほとばしる度に
幸子は彼自身がびくびくする感覚を股の間に感じていた。
「へへっ。なんか、あたしが射精したみたい・・・」
シャワーを手に取った幸子が、タイルに放たれたそれを洗い流す。
彼が満足した証拠、白濁の液体がお湯に混じってとろとろ排水口に流れていった。

「ふぅ〜良かったぁ〜〜!」
「ふふっ、お疲れさま」
くてっと脱力した彼が四つんばいの彼女にもたれかかる。
幸子は雪久の重みを、彼の存在感を背中に感じて、嬉しそうに微笑んだ。
『男の人って、すぐにイけるからいいなぁ・・・・』
そんな事を考える幸子。絶頂に達した彼の幸せそうな姿を羨ましくなった彼女が
不安そうにぽつりと言葉を漏らした。
「ねぇ・・・・あたし、ほんとにイけるのかなぁ・・・」
「だいじょぶだって、俺が絶対感じるようにしてやるから・・・」
「ほんと?」
「うん、約束する」
彼女を抱き起こした雪久が、ほっぺに軽く口づけをした。
「好きだよ」
「嬉しい・・・」
部屋であれだけ照れくさかったのが嘘のように、心のままの言葉を二人が交わす。
幸子への愛おしさのあまり、雪久は抱きしめた腕へ更に力を込めた。

「んう!・・・・・」
彼ががっしりと抱いてくれてるのが、じんじんするほど幸子には心地よい。
こんなに強く抱きしめられたのは初めてだったのだ。
「ユッくぅん・・・・今、気がついたんだけど」
「なに?サっちゃん?」
「あたし、強く抱きしめられるのが・・・感じるみたい」
とろんとした目を潤ませて彼女がつぶやいた。
「そ、そうなのか?」
試しに雪久は腕にぎゅっと力を込めてみる。
「んっ!・・・・あ、なんか・・・いぃ」

『そっか。考えてみればバージン奪ってから今まではたいていバックでしてたっけ。
 本で勉強して、強く触っちゃ駄目だと思って、なるべくくすぐる感じに攻めてたから
 これはひょっとしたら・・・・』
霧の中に光明を見つけ彼が、彼女を風呂のマットに押し倒し
体重を乗せたまま、両手で腕ごと抱きしめた。
「あぅん!」
締めつけられた幸子が一声叫ぶと、ひくんと背すじをのけぞらせた。
まるで絞られたタオルのように、幸子の奥から官能がじわじわ滲みだしてくる。

「サっちゃん、強くされる方が感じるの?」
「そう・・・みたい。初めて気がついた・・・・うふぅっ!」
「じゃ、抱いてあげるよ。ぎゅって抱きしめてあげる」
ぎゅっぎゅっと何度も彼女の肉体を締めつけ、雪久は胸板や腹を押しつけ始める。

「あふっ・・・・はぁっ、んっ!」
彼の強い刺激によって、切なそうな喘ぎを幸子は漏らしはじめていった。
『変なの、息苦しいのが気持ち良いなんて・・・・』
そんな事を考えながら、彼女は新しく見い出した快楽に夢中になっていく。
「はんんっ!んっ!・・・・んぅ!」
彼女の声を聞いているうちに、いつのまにか彼のほうもすっかり元気を回復していた。
悩ましい淫声に先ほど以上にたぎるモノ。再び股間が熱い欲望を求め始める。

「な、なぁ・・・俺、両手ふさがってるからさ、誘導してくんない?」
雪久が何を求めているのか理解した幸子が、『ふふっ』と軽く笑い
腰にあてがっていた両手を離すと、右手でそれを、左手で自らの肉を開いて導いていった。
「いいよ・・・・」
「へへっ、サンキュ」
彼が腰を落とし、誘導されるがまま自身を入り口に当てがうと、先端を肉洞へ押し込む。
ゆっくり、ゆっくりと進みながら雪久は再び腕に力を込め、強く彼女を抱きしめた。
内からの膨張と外からの絞り上げ。内外両方の圧迫感が彼女の心にじんじん響く。
「はぅぅうンっ!」
「どう?いいの?感じるの?」
「うん・・・これ、すごく・・・いっ、いいっ!ふぅん!」
ぎゅっぎゅっと彼女を強く抱きしめ、ずんずんと幸子の中をいっぱいに満たす。
締めつけと突きのリズムを同時に合わせた雪久は
彼女を高みの最頂点に昇らせる為、懸命に動きを続けていった。

「あんん!やっ、だめっ!ちょっ、止め・・・!」
「イくのか? イきたかったんだろ?」
「んんっ!ちがうの、また、その・・・・お、おしっこぉ!」
急に高まった漏出感にせっぱ詰まった彼女が恥ずかしいのも忘れて叫ぶ。
絶頂の感じが、まだうまくつかめていないのだろう。
尿意と区別できないその感覚は彼女にとって不安の元なのだ。

「いいよ、おもらししていいよ」
雪久がそれを許し、優しく彼女の耳元で囁いた。
「やっ、だめっ!汚いよぉ!・・・でちゃ、でちゃうぅっ!」
制止する彼女にかまわず彼は官能を加速させていく。
強く抱きしめ、挿入のリズムを速め、排尿感を押し止めようとする幸子の
理性をとろけさせていく。水っぽいぬちゅぬちゅする音が
腰の動きに合わせ、一段と激しくなっていった。

「あんん!恥ずか・・・しぃ・・・うくぅっ!でちゃうっ!でちゃうよぉっ!」
「でちゃってもいいよ。かまうもんか。サっちゃん、好きだよ。大好きだよ・・・」
耳元で囁かれたその言葉が、最後の理性を優しく消し去った。
「ああっ・・・!」
ふるふる震えた彼女が、彼の囁きによってふっと気を緩ませてしまうと
その途端、二人の繋がるあたりから『ぷしゅっ!』とばかりに勢いよく滴りが弾ける。

「ああうっ!・・・そんなぁ・・・」
 彼に挿入されたまま、放尿してしまった自分が恥ずかしく
真っ赤になって恥じらう幸子。首を左右に振るたびに、両のおさげが
マットの上でぴたぴた音を立てる。それに混じり、彼が激しく腰を打ちつける響きと
おもらしの水音が彼女の耳にも聞こえていた。

「全部終わった?」
「まだ、まだなの。ぜんぶ出たのに、まだなんか・・・」
「何か?」
「なんか・・・あっ、あそこから、あふれてきそうな感じがして・・・」
 不安げな顔で幸子が彼の腰に抱きつく。
今までとはまるで質の違う快楽の高みにひどく戸惑っているのだ。
尿意の収まった今、はっきりと区別できるその感覚が彼女の不安をかきたてる。
「ユっくぅん・・・なんか、恐いよぉ・・・」
「イきそうなんだね?いいよ、抵抗しなくていいからさ、俺に全部まかせてよ」
「うん、あっ、ありがと・・・」
彼の優しい囁きかけが、まるで薬のように幸子の心を和らげていく。
すっかり安心し、とろけた顔で微笑んだ幸子はまた快楽に没頭しはじめた。
「ふわあぁっ!・・・あっ!あっ!ぁはアっ!」
不安定な体と心、その全てを彼が受け止めてくれる。支えてくれる。
全てをゆだねてしまえる彼の存在が、幸子はとても嬉しかった。

「あっ!きたっ!でそう、あふれちゃいそぉ!」
一気に高まる官能。濁流のように快楽がほとばしり、彼と繋がる一点に集まっていく。
「あっ!ああっ!イきそぉ!イっちゃうよぉ!ああっ!あああっ!あぁーーーーーーっ!」
頂点に押し上げられ、宙に放り出されたような浮遊感を幸子は感じた。
浮いているような、落ちているような訳の判らない状態の中
抱きしめられている強い感触だけが、彼女にとってまるで命綱のように思えた。


「・・・ちゃん、サっちゃん?」
「・・・・・ぅん?・・・・あ、あれ?」
少しの間、幸子は意識を失っていたらしい。雪久の呼びかけで目を覚ました彼女が
うっとりと惚けた面持ちのままで、彼のほうに視線を移した。

「どぅ?イけた?」
「・・・・うん」
恥ずかしそうに、幸子がこくりとうなずく。
「おめでと、サっちゃん・・・・・」
にっこり微笑んで彼が言う。
「ありがと、ユっくん・・・・・」
素直な感謝の気持ちを込めて彼女が返事をし
そして二人は熱いキスを交わした。

「ねぇ、ユっくぅん・・・・」
「何?」
「今、ユっくんってイってなかったよね?」
「うん、でも今日はもうサっちゃんだけでいいよ」
優しく首を横に振る雪久。彼女には黙っていたのだが
まさか、気絶している最中に一人で処理してしまった、などと言えるはずがない。
「そうじゃないの、そうじゃなくて、あの・・・・その」
「・・・なぁ、こんな時くらい、はっきり言ったらどぉ?」
興奮が収まり、恥じらいを取り戻した彼女が、またいつもの堂々めぐりを
始めてしまうのを察した彼がずばりと指摘した。

「・・・・・・・ん、わかった」
幸子は照れくさそうに微笑むと、ただ一言、心のままの言葉を口にする。

「次は・・・・・一緒にイこうね」
「・・・・ああ、一緒にイこうな」
そのまま二人はもう一度、唇を重ねた。

              ◆

 次の日曜日。よく晴れた午後。
彼のベッドの上で、裸のまま見つめ合う雪久と幸子がいた。
困った顔をさせながら、押し黙っている二人。
「うーん・・・」
「あ、あはは・・・」
そして彼らは、沈黙の原因へとその視線を移す。

ベッドの上には黄色い大きなしみが一つ。

「今度の課題はこれだな」
「頑張って・・・・みます。はぁ・・・」
正座した足の間に手を挟み、うな垂れながら彼女がつぶやく。
『うみぃ〜〜』
クッションに寝そべるミュンミュンが、不機嫌そうに一声鳴いた。


『エクスタシーバージン』 (完)

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