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『契約の夜』セイドメイドシリーズ

byオゾン

第1章 「恥辱の罰」

 前置。父親経営の会社倒産とその父の自殺のため、身寄りの無いまま借金を背負い
奉公という建前で身売りさせられた16才の少女、ユカ。
 広大な庭と巨大な屋敷に戸惑いつつ、彼女はまだ二十代後半の主人健一郎と対面する。
自分が何をされにここに来たのか薄々感づいていたユカは
健一郎の話す自らの立場に「覚悟はしてきた」と答えるのだった。
 そして日が暮れ、主人とメイドの契約の夜が訪れる。

 夕食の時間もとうに過ぎ、そろそろ屋敷のもの達が眠りにつこうとする頃。
典型的な青い布地に白いエプロンのメイド服。腰の蝶結びのヒモをひらひら揺らせながら
ユカは言いつけられたシャンパンとグラスを銀のトレイに乗せ、健一郎の書斎部屋を訪れた。
「失礼します」
カチャリと扉を開け、主の姿を目で探す。
「あの、言われたものを持ってきました」
 が、彼の姿はどこにもなく、視線は部屋の中をさ迷うばかりだった。
庭を見渡せる広い窓。アンティークな書卓。ずらりとならんだ蔵書棚。
「ご主人さま?・・・・・・」
「よんだか?」
「きゃっ!」
 不意に扉の影から声がして、ユカを驚かす。
白いワイシャツに紺のズボン。ユカより頭一つ背の高いその男は館の主、健一郎であった。
「お、おどかさないで下さい!」
「別に驚かすつもりはない。君のくるのが遅かったから待っていただけだ」
「あ、す、すみません。迷っていたもので」
 彼女にしてみれば、まだ来たばかりの広い屋敷だから迷うのも無理はない、だからそれほど
ひどくは怒られないだろう。そう考えて返事をした途端。
『パシッ!』

 健一郎の平手が彼女の頬を叩いた。トレイのシャンパンやグラスが床に落ちたが
それは割れずにふかふかの絨毯の上を転がった。
「十分の遅刻。入室時のノック忘れ。余計な言い訳。これでも軽すぎるくらい軽い罰だぞ」
「・・・すみません」
「『申し訳ありません』だ。君は昼間教えたものをほとんど忘れているな」
「申し訳・・・ありません」
自分のしたミスとはいえ、ユカはひどく惨めな気分になってきた。
涙腺が緩みうっすらと涙ぐんでしまう。
「泣いている暇は無いぞ。君の仕事と『契約』はこれからなんだからな」
「はい・・・」
『契約』その言葉を聞いた途端、彼女の体がびくっと震えた。

 転がったものを片づけ、新しいグラスを運び、健一郎がシャンパンをあけて
ようやく一息ついたところで、二人の雑談が始まる。
 ユカは、健一郎が親の遺産を受け継いで今の生活をしている事を知り
同じ遺産でもずいぶん自分と立場が違うのを恨めしく思った。

 そして、高価なものに馴染めなくて身の回りにはそこそこ安いものばかり
集めてしまう事。人に会うのが苦手で、この書斎で本ばかり読んでいる毎日など
健一郎は自分の事を一通り語り、それが終わると次に彼はユカにぽつぽつと質問を始める。

 始めはたわいもない内容だった質問も、彼女の緊張が溶けて笑顔を見せるまでになり
『思ってたよりいい人かもしれない』と考え始めた頃、それはしだいに
答えにくいようなものに変わっていった。
「一人で自分の体をいじった時はあるかい?」
「あ、ありません」
「なら『オルガスムス』って知っているか?」
「言葉だけなら・・・知ってます」
「じゃ、男と女がベッドでどんな事をするのかは、知ってる?」
「それは、本とかで・・・・少し」
「それじゃ君は、今から自分が何をされるのか。判っているね?」
「・・・はい」
「では、どんな事をされるのか具体的に想像できるのかな?」
「い、いえ」
「・・・・・・処女なんだね」

 急に健一郎は核心に触れ、ユカはうつむいたまま真っ赤になって黙り込んでしまう。
「質問には答えなさい」
主人らしく厳しい口調で彼女をたしなめるように、彼はユカを問い詰めた。
しばらくの間があき、ユカは消え入りそうな、か細い声で答える。
「はい」
 彼は口の端でにやりと笑い、まるで下半身を隠すかのように
銀のトレイを前に持って立つ彼女の体をなめるようにじっくりと眺め回した。

 かかとの低い黒い靴。白いエプロンの下に見えるやわらかそうなふくらはぎに
前で組まれた細い両腕。未熟なプロポーションのためあまり強調されない細い腰。
 そして同世代の娘と比べるとやや薄そうにみえる胸。小さな肩とほっそりした首すじ。
注目する部分をゆっくりと移して、2度3度と同じところを検分する時間が
沈黙のまま過ぎていく。

 『見られている』彼の目の動きからその事を知ったユカは
そう考えただけでなんだか体がむずむずしはじめてきた。
まるで視線という名前の羽根ぼうきで体中を撫で回されているような、そんな感覚。
健一郎は、ほんの少しだけもじもじする動きから彼女が何を思っているのかを察知し
『ははぁ』とひそかにほくそえんだ。そして、意地悪な命令をユカに下す。

「両手を後ろに回すんだ」
彼女は「えっ?」という表情を浮かべたが、やむなくその言葉に従い
手をお尻の後ろにもっていくと、開いている右手で左の手首をつかんだ。
 服を着ているはずなのに、まるで何もつけてない裸を見られているような
そんな奇妙な感覚を肌に感じる。どこを見られているかは判っていた。
もちろん今までトレイで隠していた部分に違いない。

 顔を横にそむけて瞳を閉じ、彼女は恥辱に耐えていた。
『恥ずかしいよぉ・・・』
そんなことを思いながらただ事が終わるのを待ち望んでいる。
「なかなかきれいなプロポーションじゃないか」
 視線を感じないように目をつぶったユカへ、健一郎は容赦無く次の方法に責めを移した。
「肌も白くてすべすべしていそうだね、触ったら気持ちよさそうだな」
「足首からひざこぞうまで指を這わせたり、背中をなで上げたりしてみたいね」
 彼の言葉は彼女の耳に届き、ユカはあまり知識のない頭の中に色々な想像を巡らせてしまう。

 健一郎は「視線」の次に「言葉」で彼女を陵辱しているのだった。
「その後でお尻を触ったり揉んだりするんだ。谷間の奥まで念入りにな」
「脇腹もくすぐったり、なめたりしてみようか?どんな顔をするかな・・・」
「おっぱいもそこそこ育ってるようだが、まだまだだね。
 よく揉んで大きくしてやらないとな」
 ユカのもじもじする動きがまた始まった。指摘された部分を触られ
揉まれている感覚を想像し、くすぐったそうにその肉体をよがらせる。
 まだ性感の開発されてない肌には触られている時のこそばゆさしか
想像できないだろうが、いまはそれで十分だと健一郎は考えていた。

 だが彼女はあまりにも敏感すぎやしないだろうか。もしかしたら・・・
「さっき、一人でした時はないと言ったけど、その割には反応がいいな。
 もしかして本当は毎晩いじってたんじゃないのか?」
「やだ、そんなに・・・・してません」
館の主はにやりと笑い、可哀相な奉公人を問い詰める。
「ひっかかったな。『そんなにしてない』って事は少しはいじった時があるんだ」
「あ・・・・」
 ユカはしまったという表情をし、恥じらいで赤く染まる顔を
さらに赤らめながら健一郎のほうへちらりと目をやる。
口元は薄笑いを浮かべていたが、目は怒っているようなきつい雰囲気で彼女を見つめていた。
「ごめんなさい、でも・・・」
「『申し訳ありません』だろ?」
「も、申し訳ありません。でも、ほとんど触ってないんです。
 年に数回、いえ、月に一度するかしないかぐらいで、それに
 すぐ恐くなってやめてるんです。信じて下さい」
自分をはしたない人間に思われたくない。そんな一心で彼女は必死になって弁明したが
すでにもう健一郎の思惑はそんなところにはなかった。

「嘘をついたんだ。当然、罰は受けるんだよね」
「・・・・はい」
 追いつめられた小動物のような絶望的な表情を浮かべ、ユカは返事をする。
健一郎は、肘掛けのついた椅子から少し身を乗り出すと
おびえるメイドに向けて屈辱的な命令をした。
「ひざまずいてスカートをまくるんだ」
 主の言葉に拒否を許されていないメイドは、しかたなくその言葉に従う。
毛並みのいい絨毯へ可愛らしい両の膝小僧をぴたりとつけたまま並べ
青いスカートのすそをつかんでなるべくゆっくりと時間をかけ持ち上げる。
16の彼女にとって知り合ったばかりの男性に自ら下着を見せるのは
かなり恥ずかしい行為である。

見られたくない最後の抵抗。下着がぎりぎり見えないと思われる位置で
彼女はスカートを持ち上げるのを止めた。
一応言葉どうりには従っているからこれで許してくれるかもしれない。
 が、そんなユカの期待を裏切り、健一郎はさらに恥ずかしい行為を要求するのだった。
「んーよく見えないな。今持っているすそを口でくわえてごらん」

 ひくんっと彼女の体が一瞬震え、しばらくのためらいの後
恥じらいのため半泣きになっている顔へスカートを運ぶ。
小さな口にほんの少しだけ布の端をつけ、淡いピンクの唇でそれをつまんだ。
 当然あらわになる白い下着。しっかりと閉じられた太腿の間から覗く
なんの飾り気もない少し子供っぽいパンティは、彼女の性にすれていない心と同じだった。
「可愛いのをはいているね。君に似合っているよ」
 健一郎に誉められてもユカはそれどころではない。顔は耳まで真っ赤になり鼓動は
どきどきと激しく高鳴る、今の自分の恥ずかしい格好に耐えるので精いっぱいなのだ。
 許しを請いたい気分だったが口に布地をくわえている今ではそれも無理である。

「もう少しよく見たいな。両手をかかとに置いてみるんだ。口は離すんじゃないぞ」
 二つの瞳に涙を浮かべながらもしぶしぶと彼女はそれに従う。自然と体はそり返って
胸を突き出す格好になり、パンティはさっきより室内の照明をよく受けるようになった。
不慣れな体勢のため体のバランスがとれず、少しぐらついてしまう。
「ん?それだと少し不安定か。よし、両ひざを肩幅まで開くんだ・・・もっと
 ・・・もっとだ!・・・・よしそれでいい。ふらふらしなくなっただろ?」

 確かにぐらつきはなくなった。が、それ以上に恥ずかしい格好になったほうが
彼女にとって重要である。下を向いてただただ事が終わるのを待ち望むが
そんなユカに容赦なく、健一郎は先程と同じ言葉攻めを始めたのだった。
「しかしすごく恥ずかしいポーズだね。パンティが奥までよく見えるぞ」
 自分がその格好をさせておきながら、非情な言葉を彼女にあびせる。
「さっき、少ししかしてないとか言ってたけど、本当はかなり一人でいじってたんじゃ
 ないのか?もしかしたら俺の想像もつかんすごくHな方法でしてたかもしれないな」
ふるふると弱々しく頭をふって、ユカはその言葉を否定した。

「やっぱり割れ目ばっかりいじってたのかい?特に割れ目の上の方とか
 そこの中のでっぱったとこばかり、いじってたんだろうね?」
彼女は何もいわずに、青い布地をくわえた唇をきゅっと引き締める。
「図星・・・だな?」
 うつむいた顔をさらに赤らめ、目を閉じる態度はイエスという答えを表現していた。
今まで瞳に貯まっていた涙が、両目がきつく閉じられたせいでぽろりとこぼれ落ちる。
それはそのまま頬を伝って流れ落ち、青のメイド服に小さなしみを一つ作った。

「・・・ここでしてごらん。どんな風にするのか見てみたいな」
 いやいやを言うようにさっきと同じく頭をふる。彼女とって初めての命令の拒否。
「したくないのか。それじゃ、俺がかわりにいじってやろう」
 ぴくっと彼女が反応する。健一郎が椅子から身を乗り出して立ち上がろうとした途端。
「やぁっ!」
 まるでバネの様に彼女が跳び退き、平謝りの格好で両手をそろえて絨毯に頭をつけた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!申し訳ありません!もう、これ以上は
 かんべんして下さい!お願いします。他の事なら何でもします!」
必死になってユカは哀願し、主人の許しを待ち望む。
「やれやれ、ここが限界か。しょうがないな」
ややあきれた声を出して健一郎はぼやいた。

「今はここまでにして風呂にしよう。背中を流してもらうぞ」
「はい、ありがとうございます」
主人の許しがあり彼女は安堵のため息をついたが、次に大事な事に気が付いた。
一緒に風呂に入るなら、その肌を全て彼にさらさなくてはならないのは確実である。
状況はさらに厳しいものになっただけなのだった。

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