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『こころ離れて・・・』 セイドメイドシリーズ

byオゾン

第1章 「五日ぶりの夜」


 夜。星の見えないうす曇りの闇に、おぼろな月だけが浮かんで見える夜。

巨大な自宅の敷地から、数ヶ月ぶりに外出した健一郎が
海外から帰ってきたのは、実に五日ぶりのそんな夜もふけた頃であった。

 先代からの老執事が大広間から飛び出すように現れ、彼の帰宅を一番に喜んで迎える。
「おかえりなさいまし、健一郎どの。で、成果は?」
「ああ、商談は成功だ。」
「それはよぅございました。」
ニコニコ喜ぶ老執事と疲れきった主人の会話が歩きながら続けられた。

 先代からの執事にしてみれば、彼がまるで自分の孫のように思えるのだろう。
が、主人である彼にはそんな意識は全く無い。
饒舌に話し掛ける執事と、うっとうしそうに返事をする健一郎が実に対称的だった。

 そんな様子を遠くから覗く、紺色のメイド服の姿が一つあった。
メイドは、健一郎の側にいそいそと駆け寄ると、嬉しそうに一言挨拶をする。
「ご主人様、おかえりなさい!」
「ユカ・・・ただいま。」
屋敷に帰って初めての微笑みを、少女に見せる健一郎。
「あとで部屋に」
その一言を聞き、ユカは恥ずかしそうに頬を赤らめながら返事をした。
「はい、ご主人様。」


 話は五日前に戻る。
それは、ユカが「メイド兼夜の相手」として健一郎の屋敷にやってきてから
ひと月も過ぎたあたり。

 仕事もせず、一日中本を読んでいる彼の日常は変わらなかったが
古びた蔵書棚で何年もほこりをかぶったままだった本。
恋愛や、愛情をテーマにした小説を読むようになり、屋敷のものが
「ご主人様が最近急に温和になった」と噂し始めた頃である。

 彼が元いた会社から、二人の社員が来訪してきた。内容はもちろん会社の事。
社員達は、回りくどい挨拶と堂々巡りの言い訳の後、とある頼みを健一郎に持ち掛ける。

「なるほど。『海外支社の取引先の説得をして欲しい。』というのか。」
どうやら健一郎が社長の地位を放棄した後、一部の経営がうまくいっておらず
破綻しそうなところが幾つかあるらしい。

 その生い立ちから人の心理を読むに長け、前々社長の息子である健一郎は
確かに取引先との相手をするにふさわしい人物だった。
 が、健一郎は自主的に地位を放棄した身である。その上、彼と性格が合わない経営陣も
それを望んで無理矢理彼を追い出したに等しい行動を取った過去もあるのだ。

 会社命令とはいえ、追い出した相手に助けを求めるのだから、実に因果なものだ。
社命を押しつけられた二人、てっぺんまで禿げあがった部長と妙に太った課長は
気まずそうに汗を拭き、並んでソファーに座っていた。
 二人は、取引先の相手がそれとなく健一郎を持ち出している話や
他に頼れる人がいない現状などを情けなさそうな表情で打ち明ける。

 健一郎はしばらく考えていた。以前の彼ならここで考えるどころか
この社員達を家にも入れようとはしなかっただろう。

「俺の関わっていた会社がつぶれていくのは見たくないからな。よし、やってやろう。」
駄目もとでやってきて、当然断られると思っていた部長と課長は
上ずった裏声でソファーから飛び上がらんばかりに驚いたのだった。


 そんな滑稽な二人の姿を思い出し、健一郎の書斎へ向かうユカはくすくすと一人で笑った。
『あれから五日・・・・』
そして、これからされる事への期待に、ユカは恥じらいを含む意味ありげな笑みを浮かべる。

『コンコン』
「どうぞ」
主の声を確認し、失礼しますと書斎に入ったユカは健一郎の姿を確認する。
上着を脱ぎYシャツ姿になった主人は、ぐったりとソファにもたれかかり、その身を休ませていた。
「まいったな、久々の人づき合いがあんなに疲れるとは思わなかったよ。」
ネクタイを緩めたまま、そんな愚痴を彼女に聞かせる。

 別に彼は人づき合いが下手なのではない。ただ、人と顔を合わせるのが非常に疲れるのだ。
誰かと向かい合うと、自分でも知らないうちに神経を研ぎ澄ませてしまう彼。
相手の微妙な変化から、嫌悪や企みまで読んでしまおうとする特技と癖のある彼にとって
それは仕方ない事なのかもしれなかった。

ユカは、言いつけられた訳でもなく持ってきたグラスと
ワインの乗ったトレイをテーブルに置き
「それで・・・あの、今日は」
と、もどかしそうに言った。
「ああ、ちょっと待ってくれ。その前に聞いておこう。」
やや間を置き、メイドの瞳を見つめながらする一つの質問。

「ちゃんと、我慢してたか?」
ユカは、恥ずかしそうに。そして、自信がありそうに短く一言
「はい」
と答える。
 実は五日前、『出張の間は一人でするのを禁止しよう』と
互いに約束を交わしていたのだ。

「どうやら、本当のようだな。えらいぞ。」
「はい、ありがとうございます。」
彼の前では嘘はつけない。その眼差しで心の奥まで見抜かれてしまうから。
「あの、ご主人様も?」
「ああ、そんな暇も気力もなかったよ。」
メイドは主人が自分との約束を守ってくれたのを聞き、嬉しそうに微笑んだ。

ソファにもたれかかったまま、疲労の浮かんだ顔で微笑み返す健一郎。
「でも、すまない。今日は疲れているんだ。」
主人の言葉に、ユカの顔がやや曇る。
「あ、あの・・・それじゃ・・・・・」
「いや、しないと言ってる訳じゃない。俺がこうして休んでいる間に
 君が気分を盛り上げてくれないか?」

 気分を盛り上げる。要はその気にさせてくれというのだろう。
だが、ユカは具体的にどんな事をしていいのか見当がつかなかった。
『どうしよう・・・・』
ストリップでもしようか?と思い立ったが、さすがにそれは恥ずかしすぎるし
第一、どう踊っていいか判らない。

何をしてよいのか戸惑うメイドに向かって、主人は一つアドバイスをする。
「ここに来るまでに、今からどうされるのか色々想像してたんだろ?
 想像の中の自分が何をされていたのか、具体的に話してごらん。」
「あ・・・・」
ユカの頬が熱くなる。廊下を歩いている間に、卑らしい妄想をしていた事まで
主人にすっかり見透かされていたのだ。

「はい、わかりました・・・・・」
作り事の嘘は言えない。ユカはここに来るまでの間、自分が何を想像していたのか
どんな風にされたいと願っていたのか、健一郎に白状しはじめたのだった。

「・・・・・・・・・・ご主人様は、あたしを寝室に連れてって。
 そこで、大きな鏡の前に立たせるんです・・・・・・・
 全身が映る姿見の前で、あたしは・・・自分の体を見ながら・・・
 メイド服の上から、その、ご主人様に触られるんです。」
「さわる? もっとエッチな言い方があるだろ?」
「あ、はい。い・・・いじられるんです。」
「俺はどこをいじってるんだい? もっと詳しく言うんだ。」
「はい、その・・・ご主人様は、エプロンの上から胸を・・・・揉んだり。脇腹とか
 お腹とかを、撫で回したり・・・・首筋にキスしながら、お尻を・・・・揉むんです。」

 実際に主人が自分の肉体をまさぐる感触を想像しているのだろう。
彼女はもじもじしながら、時おりその細い体をひくんと震わせていた。

「ご主人様は・・・あ、あたしを焦らすんです。五日ぶりなのに、すごく・・・焦らすんです。
 あそこには絶対触らないで・・・・ももの内側をなで上げたり、おっぱいの先っぽを・・・・
 ん・・・その、ちょんちょんってつついたりするんです」

 同年代の少女と比べるとやや薄い胸を突き出し、うっとりと目を閉じながら直立する。
テーブル越しの主人の視線を意識しながら、少女はその身を疼かせていた。
メイドのいやらしい妄想は更に続く。

 鏡の前でいじられ、丹念に服の上からまさぐられる様子を詳しく話すユカ。
そして淫靡な表情になった鏡の中の自分を見つめながら、メイド服をじわじわと
ひとつひとつ脱がされていく様を、彼女はじっくり語っていった。

エプロンをはぎ取り、紺色の上着を脱がされ、脇のファスナーを降ろされて
足元にするりとスカートが落ちる。中に着ていたシュミーズの肩紐が外され
これも難なく足元へ。ソックスとブラとパンティだけになった16才のメイドの
まだ発育中の全身が鏡に映し出される。そんな淫らな妄想。

「ご主人様は・・・下着姿のあたしの体を、んっ・・・・・舐めるんです。
 ひざの裏からお尻まで登って、脇腹を・・・ふうっ、舐めるんです。」
「それから?」
「それから・・・でも、まだあそこには触ってくれなくて。ご主人様はお尻の間を撫でて、
 じ、焦らすんです。あたしが、凄く欲しいのに・・・わざと焦らして、ふうぅっ・・・・」

 切なそうなユカの声に、次第に喘ぎが混じるようになってきた。
焦らされるとよけいに感じてしまう自身を知っているメイドは
自らを苛めるように、妄想の中の自分を焦らしに焦らす。

ソファーでワインをちびちびやりながら見つめる主人の前で
メイド服の中の火照った体をもじもじさせながら、淫らな告白は続く。

 ブラも外され、パンティ一枚とわざと残された膝上まであるソックスだけの姿になったところで
ようやくベッドに連れられていく。すぐ脇に寄せた鏡の前で、股を開かされるユカ。
パンティの中心がじっとりと湿っているのを見せつけられ、指摘される様子までも
彼女は想像の中に克明に描き出し、それを主人に話すのだった。

「あたしは、ご主人様に言われたとぅり、鏡を見ながら・・・その、オ、オナニーを
 するんです・・・・・後ろから抱かれて『いやらしいメイドだな』って、言われながら
 あたしは自分のあそこを・・・・はぁぁっ・・・」

 そこまで話し、とうとう耐え切れなくなったユカは
立ったまま股間に両手を這わせ、中指で自らの中心をきゅっと押した。
じん、とする感覚がそこからユカの全身へと広がっていった。

「駄目だぞ、手は使うんじゃない。」
「あ、はぃ・・・」
健一郎の命令に、ユカは仕方なしに両腕を後ろ手に組む。
その姿は、主の言葉の縄で縛られる自分に陶酔しているようでもあった。

 見られているのを意識しながらメイドの妄想は続く。
自分でいじりながら、足の間に分け入った主人が、布ごしに舌先でつつく感覚。
そして、パンティを脱がされ、指を入れられたまま肉芽を吸われてイってしまう様子を
ありありと彼女は語る。

そして焦らしに焦らされ、やっと待ち望んでいたモノが入ってきた肉感を
ユカは、腰をうごめかせながら詳しく描写していった。
「あたしのお肉を開いて・・・ごっ、ご主人様が中に・・・あそこの中に
 入ってくるんです・・・・・大きいのが、んんっ!・・・・あそこいっぱいに、はぁっ・・・」
すでに膝はがくがく震え、立っているのがやっとの状態である。

「ご、ご主人様は・・・・あたしを、後ろから突いて・・・んっ、その、ぁ、あの・・・」
「どうしたんだ? 早く言うんだ」
「はぃ・・・あの、あたしと繋がっている部分を、か、鏡に・・・写して、見せるんです。
 ・・・んっく・・・・足を、足をいっぱいに広げさせて・・・・・・あ、はぁっ・・・
 ・・・・出た・・り、入ったり・・・するのを、あたしに・・・んんっ、見せるんです。」
「そうして欲しくて、そんな想像をしてたんだね?」
恥辱する主人の言葉に唾を飲み、ユカは黙ったままこくりとうなずいた。

「んっ、あっ、あたしは、自分でおっぱいを揉みながら・・・ふぅぅっ・・・・・
 ご主人様に、クリ・・・トリスを、いじられて・・・あっく、はぅぅっ!・・・・」
もう話すことすらもままならず、少女は妄想の世界に没頭していった。
両足をもじもじこすり合わせ、わずかな布ずれの感触さえも主人の指を想像し
後ろから突かれる妄想に腰を前後に蠢かせる。限界はかなり近いようだ。

「あたしの、んんっ!・・・後ろから、からだ中をいじりながら・・・
 ご主人様が・・・何度も突いて、突いて、あっ!あっ!ああっ!
 ご、ご主人様ぁ・・・・ふううっ・・・あっ!あたし、もぉ・・・」
「いいよ、ちゃんと見ててやるぞ。好きなようにするんだ。」
主人の許しに、幸せそうな笑みを見せたメイドが最後の妄想を加速させた。

「ご主人様が・・・な、中に出すからしっかり見ろって・・・んっ!言うんですぅ!
 あたしは、あふっ! 鏡に写った、つ、繋がってるとこを見ながら・・・はんんっ!
 ご主人様が、中に、中に!あっ、あっ、中・・・あっ!あっ!ああっーーーーーーっ!」

妄想の健一郎が中に放ったのだろう。その感覚を想像した彼女も、その場に立ったまま
ふるふると震え、恍惚の表情を浮かべていた。

「・・・・・・・・・・・っはぁっ、はあっ、はあっ・・・」
くたり、とその場にしゃがみ込むユカ。股間を押さえてうずくまった彼女は
カーペットの上でしばらくの間、肩で荒い息を吐き続けていた。

「すごいな、触らないでもイけるんだね。」
「・・・・・・・・」
 健一郎の言葉に顔をあげたメイドは、主人と目が合うと
紅潮した顔を更に赤らめて、またうつむく。
主人の気分を盛り上げるはずが、自分だけで盛り上がってしまったのを
申しわけなさそうに彼女は恥じらっていた。

「あの・・・」
「謝らなくていいよ。ほら、こっちに来るんだ。」

 のろのろと立ち上がったユカは、期待に溢れる表情を見せ
ソファーに座って待つ主人の元へ向かう。
愛おしい彼の元へ、火照るその身を捧げる為に、彼女はふらふらと近づいていくのだった。

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