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『こころ離れて・・・』 セイドメイドシリーズ

byオゾン

第2章 「おぼろな月」


 書斎部屋のソファーにゆったりと身をもたれる健一郎。
そして彼のすぐ前には、立ったまま肉体を疼かせるメイドのユカがいた。

 残りのワインをぐいっと空け、前かがみになった主人はメイドにまた一つ命令をする。
「自分でスカートをめくるんだ。どんなふうになってるのか見せてごらん。」
「はい・・・」

 ためらいも無しにメイドはエプロンのすそごと紺色の布を持ち上げ
すっかり濡れそぼっている下着を嬉しそうに主人にさらす。
それはひと月前の、初めてここに来た頃の彼女からは到底考えられない格好だった。

 めくり上げたスカートの中から愛液に蒸れた湿気がむわっとあふれ
濃密な性の香りが健一郎の鼻先に香った。
つつと、可愛らしい太股にひとすじの雫がたれていくのが見える。
「ぐしょぐしょだね。パンティに吸いきれなくて、たれてるぞ。」
「は、早くぅ・・・ご主人様ぁ・・・」
 せがむメイドを焦らすように、彼はその湿った部分にふうっと息を吹きかける。
吐息が何度もそこにあたり、ひんやりとした感触がユカの秘部に感じられたが
その程度では熱く火照った性器を冷ますのはとうてい無理だった。

「も、もう、駄目っ!」
息を吹きかける主人に待ちきれず、焦らさせる限界に達したユカが
突然彼をソファーに押し倒し、細い身体で主人の上から抱きついた。
「おいおい。 何だい、いきなり?」
「あぁ、申し訳ありません、あたし、もぉ待てなくて・・・・・
 ご主人さまぁ・・・・お願い。早くあたしを、早く抱いてぇ!」

熱烈なキスを主人に浴びせながら、彼女は健一郎に肉欲を求めた。
「だめだめ、んっ・・・ぷはっ、だめだ。まだおあずけだよ。」
キスを遮り、メイドのおねだりを健一郎は優しくたしなめる。
「ああぅ、そんなぁ・・・ご主人様だって、もぅこんなにしてるのに・・・」
腰を擦りつけ、熱く疼いている秘部でズボン越しの肉棒を上下にこすり
主人のモノがすでに膨張しているのをユカは指摘した。

 横になった健一郎の上で、いやらしい亀裂に接触を求めてユカがうごめく。
「ふふっ・・・」
淫靡な笑みを見せながら彼女は差し入れた右手を使い、ズボンのジッパーを下げていった。
「こらこら、だめだって言っただろ。」
どことなく温和な口調で主人はメイドを叱る。そしてユカの両腕をつかむと
後ろ手に組ませ、淫欲に正直な手の動きを抑えた。
「ぅうん! い、意地悪ぅ!」

 そのままお尻を淫らに振り、自分のあそこを主人の肉棒にすりつけるユカ。
健一郎は、更に両足で彼女の足を巻き込み、その動きを抑えつける。
が、それでもメイドの肉欲はおさまらず、下半身を主人に押しあて
圧迫する亀裂への感触に夢中になっていた。
「はぁあ・・・・い、いぃ・・・・」
圧する度、きゅっきゅっと尻肉が締まるのが彼女自身にも良く判った。

「困ったメイドだな。後でおしおきだぞ。」
「おしおきされてもいいです・・・だから、今は・・・早く入れて欲しいのぉ」
主の忠告も受け入れられず、メイドは淫欲を満たそうと彼にせがむ。

「やれやれ、ご主人様のおちんちんでオナニーするメイドなんておまえだけだぞ。」
「あふぅっ!申し訳・・・ありません。でも、これ、止まんないんです・・・」
健一郎の恥辱に、ユカは彼の胸に汗ばんだ顔を押し当て、恥じらっていた。
「すけべだな、凄くいやらしい動きだぞ」
「あんまり・・・恥ずかしい事、言わないでぇ・・・・」
「いいのか?おちんちんでオナニーするのが好きなのか?」
「ぁふ・・・はい、好きです。ご主人さまのが好きなんです!」
幾度も囁かれる卑猥な言葉すら、媚薬のように身体に効いてしまう。
囁きの一つひとつにメイドは更に肉体を熱くし、淫靡な興奮で登りつめていく。

「んんぅ!あたるのぉ・・・チャックの金具が、クリトリ・・スに、あひっ!」
 あっ!やっ、また!・・・・・きちゃう!」
二度目の絶頂が近づいている。健一郎は彼女の両腕を放すと
背中をぎゅっと抱きしめ、巻き込んだ足にも力を込めて全身でユカを抱いてやった。
「あっ、イっ、イっちゃう!あっ、駄目っ!」
きつく抱かれた身体をさらに激しくこすりつけ、彼女は最後に向けて登っていく。
「んんーー!あっ、ああっーー!はぅぅうっ!ううぅっ、んんっ!んっ、んぅっ!」
「イってるんだね?イき続けてるんだろ?」
「くぅぅ!あはぁっ!そうなのっ!あぁっ、まだっ!終わんなぃ!・・・あんん!」
強い肉感が得られないせいで、じっくりと沁み出すような
弱く延びるオルガスムスをユカは味わっていた。
それは、快楽がはじけるのではなく、じわじわ滲み出ていくような、初めての絶頂感だった。

「あふ・・・はぁぁ・・・やっと、終わっ・・・・」
「どうだ?満足したかい?」
優しく語り掛ける主人の言葉。だが、ユカはその問いに首を左右に振った。

「だって、まだ入れてもらって、ないです・・・」
「すけべな奴だなぁ。おちんちんなら誰のでもいいみたいだね。
 ユカは、どんなおちんちんでもイくんじゃないのか?」
健一郎は、腕の中のメイドの淫乱ぶりにすっかりあきれていた。
「そんな・・・あたし、ご主人様でなければイきません!」
きっぱりと断ち切るように彼女は否定した。
眉をひそめたやや悲しげなその顔は、主人の問いかけに
自分が信頼されてないかもしれない不安感を表している。

「ははっ、それを聞いて安心したよ。」
彼女の言葉に、健一郎はどこか含みのあるような笑顔でにやりと笑った。
が、ユカは全くそのことに気づいていない。
ただ主人に信頼された嬉しさで、無垢な笑顔をあらわしていた。

「ねえぇ、もぅいいでしょお?」
猫なで声で主人のモノをさすり、おねだりする彼女。
もうすっかり待ちきれないといった様子である。
「しかたない奴だな。じゃ、お尻を持ち上げるんだ、」

 言われたとおりに彼女は下半身を主人から離し、小さなお尻を上に向ける。
メイドの背中を撫でていた健一郎の指先が、ユカの可愛らしいヒップにまで
たどりつくと、そのままゆっくりスカートを引っ張っていく。
おもてにさらされた双丘に、ひんやりした外気を感じるユカ。
そのまま主人の指は、魅惑的なヒップを隠す白いパンティを摘み、するする降ろしていった。

 パンティを膝まで降ろした健一郎は、彼女の身体をソファーから持ち上げ
そして、その小柄な体をころりと仰向けにカーペットに転がし
「ここでいいだろ?」
と、一言問う。
「はぃ、お願いします・・・」

 ユカは『久しぶりなんだから、できればちゃんとベッドでしたかったな』
とちらっと思ったが、それ以上に待ちきれない肉欲に、もう場所はどうでもよくなっていた。

「ほら、腰をあげて。今、入れてやるからな」
「ああ、早くぅ・・・」
すっかり待ちきれずに腰をもたげておねだりするユカ。
そんな姿のスキをつき、健一郎はソファーのクッションの下に隠していた『あるもの』を
こっそり取り出す。目を閉じていた彼女にはどうやら気づかれてないようだ。

「ねえぇ、まだぁ?・・・」
眉をひそめて、ユカはおねだりをつづける。
「もうすぐだよ。今、ユカがぐしょぐしょにしたパンティで濡らしてるんだ。」
「やぁん、もぉ・・・」
 健一郎は、手にした『あるもの』をユカの膝まで降ろした布きれで湿らせる。
実際、ユカの秘部はそんな準備をしなくても十分なほどに濡れていたが
初めてつかうものだけに慎重に扱った方がいいだろうと考え
健一郎は、それにまんべんなくユカの愛液を塗りつけていった。

「入れるぞ・・・」
「はい・・・・」
股間に手にした切っ先をあてがい、じわじわ彼女の中に沈めていく。
「あっ、ああっ! 入ってくるぅ! ご主人様のが、どんどん入ってくるぅ!」
焦らされるだけ焦らされ、待ち望んでいた挿入に彼女は歓喜する。
それが主人のものとは違う異物とも知らず、ユカは内肉への凌辱にすっかり喜んでいた。

 先端が膣奥深くまでたどり着く。
『・・・・あれ?』
その時になり、ようやく彼女は内部に何かいつもと違う違和感があるのに気がついた。
五日ぶりに身体が慣れてないのだろうか?とも思ったが
それ以上に、肉体そのものが「これは違う」と言っているような妙な感覚がする。

「ご主人様ぁ・・・・・あの?何か変・・・」
その言葉を聞きもせず、健一郎はするりとパンティを上げ、その布を元の位置におさめた。
が、きちんとパンティをはいているのにもかかわらず、内部にまだ何かがあるのだ。
さすがにユカも今入っている物体が、主人の肉棒ではないと気がつく。
「ねぇ、ご主人様。何?これ?・・・ねぇ?」
不安なまなざしで彼を見上げるユカ。

そんなユカの目の前に、上にのしかかっている健一郎がピンク色のコントローラーを見せつけた。
細いスプレー缶程の大きさで、幾つかのスイッチと一本のコードがついているそれは
ユカの知識の中に、どこか見たような気がするものだった。

「本で見ただろうから知ってるね?『大人のおもちゃ』ってやつだ。」
「え?・・・・」
「確かユカは言ってたよな『お仕置きされてもいいから入れて欲しい』って。」
「で、でもっ・・・」
「だから、お仕置きにこれを入れてやったんだ。」
「そ、そんなぁ・・・お願いします。抜いて下さい、これ・・・・あたしご主人様のが・・・」

 どの程度の大きさなのか?どんな形をしているのか?まったく判らない異物が
自分の中に入っている恐怖感。主人以外のモノを自分の中に受け入れて
しまった事実に、ユカはすっかり困惑していた。

異物を取り出そうとユカが下半身に伸ばしたその腕を、健一郎の左手がつかむ。
両手首を頭の上にがっしり固定し、彼は電動淫具の拒否を許そうとしなかった。

 狼狽する彼女にかまわず、健一郎は容赦なくカチリとスイッチを入れる。
「あっ!やっ!何!?何なのぉ!?あそこの中がぁ!」
ふるふる弱々しく震えだす玩具。まだ最弱の振動だったが、生まれて初めて体験する
小刻みな膣肉の振動感に、ユカはすっかり動転していた。
まるで、小さなさざなみが幾度も押し寄せてくるような快楽を感じるユカ。
「んんん!けど、どこでこんなの・・・」
「会社の奴等とな、冗談半分でポルノショップに寄ったんだ」

 健一郎は出先での事をふっと思い出す。商談成功の打ち上げに飲んだ帰り。
酔っ払った例の二人の社員に、無理矢理突き合わされたポルノショップ。
専用タクシーを止めさせ、待たせていたから拒否できなかったのだ。
『まったく、日本のサラリーマンがすけべというのは本当だな。』
自分の事を棚にあげて、健一郎はにやりと笑う。

健一郎の笑みを見て、ユカは背すじに何かぞっとするものを感じた。
久々に感じる真の凌辱感。健一郎が優しさを知る前の冷たい瞳。
その目が今、自分を見つめているのだ。
「ユカはもう一つ言ってたよな?『ご主人様でなければイきません』って。
 本当にイかないのか、今から試してやろう。」
「あ・・・・・」
たぶん、ユカは彼の瞳の残酷性がわざと造ったものだというのに気がついてないのだろう。
青ざめた表情で絶望的な恐怖をその瞳に浮かべているのが健一郎に良く判った。
『いや、たぶん凌辱欲も半分は本気なんだろうな・・・だからこいつは怖がってるんだ』

 ゆっくり、ゆっくりと健一郎はスイッチを上げていく。
細かく刻まれた目盛りをキチキチ鳴らし、二つ上げては一つ下げ
三つ上げては二つ下げ、強弱の変化をつけながらだんだん振動を強くしていく。
『ゥ・・・・ゥゥゥ・・・ゥゥゥゥンンンゥゥゥンンンンブブブ』

次第に、ユカの耳にもくぐもった振動音が聞こえはじめた。
それに伴い、強制的に送り込まれる悦楽のさざなみも
じわじわと高さを増していった。
「んっ!・・・あっ!、あっ!、はぁぅぅっ!」

主人でない、いや、人ですらない玩具にいたぶられ
こんなにも快楽を感じている自分が、ユカは信じられなかった。
自分が主人以外のものに、これほど反応するなんてありえないと思っていたのだ。

どうしてこんな事をするのだろう?どうしてあたしを苛めるのだろう?
喜びの無い、拒否すべき快楽を健一郎はユカに与えていく。
おしおきにしてはあまりにも酷すぎる。と、ユカは思った。

「あぅぅっ! ねぇ、ご主人様これ止めて! やぁぁ!こんなのやぁ!」
「駄目だ。自分で『イかない』って言ったんだからな。裏切るんじゃないぞ」
メイドの必死の哀願にかまわず、主人は冷ややかにそう忠告した。

『裏切る』その言葉がユカの心にずんと響く。
そうなのだ、これは自分が主人を信じているかのテストなんだ。
「我慢、できるよな?」
「が、我慢すれば、いいんですね?・・・はい、わかりました・・・」
堪えるしかない。この強烈な快楽の波に自分がどこまで辛抱できるか判らなかったが
やるしかないのだ。不安な心の中で、ユカはそう覚悟した。

「そうそう。先に言っておくけど・・・」
快楽を堪えるメイドへの、あまりにも無慈悲な警告。

「この程度でイくようなら、もう二度と抱いてやらないからな。」
「そっ、そんなぁ・・・ううっ・・・・」
たぶん、嘘なのだろう。今まで優しかった主人がそんな事を言うはずがない。
が、もし本当だったらという不安がユカはどうしても消せなかった。

それにたとえ嘘だとしても、ここでイってしまい健一郎を裏切る訳にはいかないのだ。
これはテストなんだ。じぶんが耐え切れば問題無いのだと、彼女は自分自身に言い聞かせた。

『でも、久しぶりなんだから、もっと優しくしてくれてもいいのに。どうしてこんな・・・・』
五日前。主人が出かける前にしてくれた優しいキスを思い出しながら
カーペットに抑えつけられたメイドはそんな事を考えていた。

途切れなく機械が与える愉悦から気をそらすため、窓の外に目をやるユカ。

 ガラスごしの夜空には、やや欠けたおぼろな月がぼんやりと浮かんでいるのが見える。
存在しているのはわかるのに、決して明確にならないおぼろ月。
その姿が、まるで今の健一郎の心のように彼女には思えた。

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