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『素顔のメイド』 セイドメイドシリーズその4

byオゾン

第3章 「初体験、支配、喪失」

 思えば、彼女に手を出さなかったのは、性欲をさらけ出すのが
恥ずかしいだけではなかったのだろう。今まで培ってきた
母親のようでもあり友達のようでもある関係を崩したくなかったからだろう。
彼女とする決心ができたのは、父親にだけは取られたくないという
ただそれだけの独占欲。それだけだったような気がした。

「大きくなりましたね、坊ちゃん。」
初めての口づけをした後、マリィの言葉で俺は気づいた。
もう彼女は膝立ちではない。二人とも同じ立ったままの姿勢でも
俺のほうがほんの少し高いくらいだった。
「マリィ、そう思うならもう『坊ちゃん』は、やめろ。」
「ふふっ・・・わかりました。じゃあ、ご主人さまでいいですね?」

 背後のベッドにマリィを倒し、今度は舌を絡める大人のキスをする。
ナメクジの交尾のようなぬるぬるした交わりが俺の興奮を加速させる。
「んくっ・・・んっ、はむっ・・・・・ふんん!ぷはっ!」

 やっと唇を放す。はぁはぁという彼女の息づかいが息苦しいものなのか
興奮によるものなのか判らなかったが、目の前にある潤んだ瞳は
俺へに向けて注がれる確かな好意を表わしていた。

荒い息と上昇した体温。そのせいで女性独特の甘酸っぱい匂いが濃くなってくる。
俺は、エプロンの上から右手で乳房を揉みしだき、反対側の球体に頬擦りをした。
想像した以上に柔らかかった。そして夢中になるほど心地よい感触だった。
両手と頬を使いしばらくの間、俺はふたなりの果実を交互に味わっていた。

「ふふっ・・・ん・・・・・んふっ」
くすぐったそうな喘ぎを聞きながら、脇から手を差し入れ
メイド服に突っ込むと今度はブラの上から強く揉む。

「んんっ!ご主人さまぁ、苦しいから脱いじゃいますね。」
確かに、彼女はまだエプロンさえも外していない。
このままだと胸が窮屈で仕方が無いだろう。
俺はこくりとうなずくとマリィが脱ぐのにまかせてやった。

首の後ろのリボンが解かれ、濃青の服を留めるボタンが細い指で丁寧に外される。
背中のブラホックを素早く外した彼女だったが、ブラ自体はすぐには取らず
両腕で胸にあてがったまま、恥じらい交じりの意味深な含み笑顔でこちらを見つめていた。
『見たい? ねぇ、見たいんでしょ?』
明らかにそういう表情だ。だが、俺はもう性の欲望を隠したりはしない。
マリィの手首を掴み、問答無用で一気に広げさせてやった。
「あん!」
彼女の胸は大きなほうだったが、間近だと改めてそのボリュームに驚かされる。
片手ではつかみきれない程大きく、マシュマロのように柔らかいふくらみ。
そしてその両端には待ちわびるように尖る乳首が二つ並んでいた。

小さなピンクの実を貪るように口に含み、吸ってやる。
反対側のはめちゃくちゃに揉み潰す。もう後は本能のままに突き進むだけだ。
「やっ、ちょっと坊ちゃん痛い!」
「ご主人さま、だろ?」
「あふっ!ああん!」
おしおきに先端をつねってやる。痛がり、可愛い声で喘ぐマリィ。
背徳的な支配感に、俺は背中がゾクゾクするものを感じていた。
「あひっ!痛っ!あぅぅ、申し訳ありません!申し訳ありま、あぁっ!」

 もしかしたら、父親が俺にマリィをあてがったのは
こういった他人を服従させる支配感を教育したかったのかもしれないな。
思考の片隅でそんな考えを一瞬巡らせたが、次の瞬間にはもう忘れてしまっていた。
今はただ、この甘い果実をほおばるのに夢中だった。

 ひとしきり乳房に満足した後で、俺はいよいよ下半身に移ることにした。
スカートを乱暴にまくり、白いレースの下着を食い入るように見つめる。
「ご主人さまぁ、強くしちゃ嫌ですよぉ。」
胸の責めに懲りたのか、そう哀願する彼女。だが、俺は黙ったまま行為を続けるだけだ。

顔を近づけ深呼吸をすると、甘い香りに混じって少し尿っぽい匂いを感じた。
パンティをずり下げ、両足から抜く。初めて間近で見るマリィのあそこ。
膝上まである白いソックスと黒い毛並みの対比が実に淫靡だった。

「ほら、足開けよ。」
「だって、恥ずかしい・・・」
ぴったりと両膝を閉じ、拒否するマリィ。
「あいつにはいつも見せてるんだろ?」
「でもぉ、こんなに明るくないもん。」
「いいから開けよ!」
恥じる彼女にかまわず、俺は強引に膝を割り開き
マリィの下半身を、はしたない大股開きの格好にさせてやった。
「あん、やぁぁ!」
真っ赤になった泣きそうな顔を、両手で覆う彼女。
その様子が俺の陵辱心をゾクゾクかき立てる。

両膝を固定したまま、鼻先が触れそうなまでに秘部へ顔を近づける。
本棚にある医学書の写真と違い、縮れた陰毛が密集したものがそこにあった。
俺は邪魔な毛を両方にかき分けると、はじめて目にする女性器への探索を続けた。

縦に割れた亀裂に赤い肉ひだがほころび、しっとりと濡れる。
熱帯の温室のような熱く湿った性臭を鼻に感じながら
俺は彼女も興奮しているんだな、と考えた。

 両方に広げ中身を覗く。花弁のひだひだ具合やぷっくりしたクリトリス。
膣の入り口などを写真と思い比べながら確かめる。グロテスクだが愛らしい形。
「やぁん坊ちゃぁん。そんなに見たら恥ずかしいです。」
「『坊ちゃん』はやめろって言っただろ。」
「あん、申し訳あり・・・はひっ、あふぅ!んんっ!」

未だに坊ちゃん扱いされる腹いせから、俺は一番感じるらしいクリトリスを
人差し指でぷるぷる弾いてやった。すすり泣くように彼女が喘ぐ。
「ひっ!んっ、ふぅぅん!あっああっ、んふぅ!」

いじる刺激に答えて、ひくひく震える肉ひだがとてもいやらしい。
ぷりぷりに脹らんだクリトリスをなおも苛め続けていると
次第に亀裂から蜜がじわじわ滲み、そしてとろとろ溢れ出し始めた。
熱く淫靡な匂いが更に濃くなっていく。

『これが濡れるってやつか。』
初めて見る光景に、ちょっとした感動を覚えた。
ズキズキするほど脳に血が巡り、興奮していた。
もう止まれない。脱ぎきるのさえもどかしくて
俺はトランクスを膝にひっかけたまま、マリィの上に覆い被さった。

「・・・いくぞ」
「はい。お願いします、ご主人さま。」
初めてのセックス。可愛いマリィと深く繋がることのできる瞬間だ。
彼女が俺の背中に左腕を回し、パジャマのシャツを握り締める。右手は下に降ろし
ビクビクする俺のモノを優しく支えると、そのまま亀裂にあてがい
入り口へと導いてくれていった。

「いいですよ。んっ・・・・・くふぅ・・・あ、はぁぁ」
彼女の言葉に従い、ゆっくり腰を落とす。
ぬるぬると暖かいマリィの内肉を俺の肉棒が突き進む。
「はぅぅん!あっ、中が!中がぁ!ああぁっ!」
喘ぎながら、マリィがぽろぽろ大粒の涙を流す。
「どうして泣くんだ?」
「だって・・・嬉しいんです。坊ちゃんがしてくれるなんて。」
「ほらまた!『坊ちゃん』って言わないと決めたはずだろ?」
「あっ!あひっ!申しわけっ!ああっ!あああああん!」
腰の使い方なんて知らなかった。ただ、強引に突いて突いて突きまくるだけだった。
だが、それでもマリィは喘ぎ悶え、俺の責めに喜びで答えてくれた。

愛液の滴る肉壁が俺の分身を包み、マリィが
「あっ!あっ!ああっ!」
と甲高く喘ぐのに合わせて
『きゅっ、きゅっ、きゅうっ!』
と俺を締めつけてくる。冷房が効いているはずの寝室で
俺と彼女は汗だくになり、セックスの快楽を貪り合っていた。

「ぐっ!くぅっ!で、出るっ!」
「はぅんっ!坊っちゃぁん!きてぇ!出して下さい!」
もう少し、もう少しの間だけこの快楽を味わっていたかった。
だが、射精したくなるまでの時間は、あっという間だった。
精液がペニスの根元まで押し寄せ、今にも溢れそうになる。
押えきれない暴発の衝動がペニスの先に湧き起こる。

 懸命な努力も空しく限界を悟った俺は、今まで以上に乱暴な腰使いで
熱くぬめった膣奥へ肉棒の突きを繰り返し
彼女の願い通り、そこへ俺の精を放ってやる事にした。
「イくぞ!出すぞ、マリィ!」
「あふっ!はいっ!お、お願いします!」
至福の時が訪れる。ドクッ!ドクッ!と熱いスペルマがほとばしり
俺の先から肉洞の奥深くへ解き放たれる。
頭の中が真っ白になる。もう何も考えられない。考えたくない。

 三回、四回、五回・・・ビュッ!ビュッ!っという
途切れとぎれの射精に合わせ、俺の腰が繰り返し痙攣した。
「あぁああっ!熱いのが!・・・・嬉しい、あぁ!ああっ〜〜〜〜!!」
マリィは俺に両腕と両足を絡め、俺を全身で強く抱きしめた。
嬉し涙をこぼし、恍惚の表情をさせると、マリィもそのまま
幸せそうに果てていった。


「っはぁ、はぁ・・・・・ふぅ・・・」
ようやく一息ついた後。俺の心にある心配が頭をもたげた。
「マリィ、今日は安全日か?」
避妊の心配にマリィは首を横に振った。だが、大丈夫ですと彼女は言う。

「赤ちゃん・・・できない体なんです。」
寂しそうにそう語るマリィ。小さい頃にした熱病のせいで
そうなったのだとマリィは教えてくれた。

 そう、彼女にも過去の苦労があったのだ。熱病に女としての機能と
知恵を奪われ、幼い心のまま苦しみながらも明るく生きてきたのだ。
彼女の心は俺の思っていたような単純な作りではなかった。
人の精神は『仮面』と『素顔』だけで存在するのではない。
さらにその奥に、生きてきた月日と同じだけの深いものが形作られているのだ。

 だが、それが理解できるにはまだ俺は若かった。
あの時はただ妊娠の心配が無くなったとしか考えなかった。
彼女の寂しさと苦しみは、今思い出してやっと気づいたのだ。

確かに俺は若かった。抜かずにそのまま二度、三度と続けざま彼女の中に出した。
喜びに喘ぐ彼女が可愛くて、快楽を手放すのが惜しくて、体力のある限り交わり続けた。

「はあっ、はぁ、はぁ・・・・」
三回目を出し終わった俺は、入れっぱなしのままマリィの上でぐったりしていた。
汗ばんだ肌と肌が俺の体重で密着し、ぴったり張り付いている。
全てが終わった心地よい疲労感で、全身が痺れるようだった。
「ねぇ、ご主人様。」
俺の頭を撫でながら、マリィが耳元で囁やいた。
「ご主人さまはあたしのこと、好きですか?」
「・・・・・・・・・・」
答えなかった。言えなかった。たぶん彼女は悲しそうな顔をしていたと思う。
だが心を知られるのが恐かった。内面を見られるのが嫌だったからだ。

すまない事をした。今はただそう思うしかできないのが辛かった。

          ◆

 あれから数年の間。いつも行為の最中に、マリィの内を告白させた。
彼女が何を考えているのか、何を思って毎日を過ごしているのか知りたかった。
ただ、相変わらず俺から彼女へ好きだと言うことはなかった。

不服そうな顔をしながらも彼女は俺の聞くままに全てを話し
そして、俺から求めていたにも関わらず、結合の間際にはいつも
「お願いします。」と必ず一言、哀願した。

『お願いします』・・・か。ユカと初めての時が思い出される。
そうだ。あの時の哀願と同じなのだ。多分それがユカに惚れた理由なのだろう。
ユカに『好きだ』と告白したのは、あの時言えなかった懺悔なのかもしれない。

 ふと、ユカは彼女の代わりなのだろうか?という疑問が頭によぎった。
確かにそんな部分が俺の心にあるのかも知れない。それは否定しない。
だが、ユカを完全にあいつの代わりにする気はないはずだ。
自分自身にもうまく説明できないが、たぶんそうだと思う。

 別れはあっけないものだった。高校一年の時、アメリカに一年間留学し
返って来ると、彼女の姿は屋敷のどこにもなかった。
どうしてもという理由で引き取られていったらしい。

父親は詳しく説明してくれなかった。
俺への教育。他人を支配する教育が完了したという事なのだろう。
もちろん悔しかった。だが何もできなかった。父親には逆らえなかった。
あの時の俺はそこまで反抗する気力も無いただの人形だったのだ。

心を開け放ち、見せてくれる存在はもう居なくなってしまった。
そして、他人の心を知りたがる自分だけがここに残ってしまった。

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