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『囚われる想い』 セイドメイドシリーズその7

byオゾン

第5章 「暴露」

 健一郎がベッドの下から出したもの。それは大きな旅行カバンだった。
カーペット上のそれは、ダークブラウンと黒のツートンカラーで彩られた
有名なメーカー製品で、厚みのある長期旅行用のものだ。
しかもそれは冴が見た覚えのある色と形をしていた。

誰のトランクだったかしら?と疲労した頭でぼんやり考える冴。
健一郎は、半開きになっていたフタを開けると
くるりと半回転させ、その中身を冴に見せる。

中には、ミヅキがいた。ただ、その格好は普通でなく
口に猿ぐつわをはめられ、衣服の上からロープで縛られて
身動きを封じられた姿にされていた。

「!?・・・な、なによこれ!」
一瞬にして冴の意識が目覚める。

「こいつはな、こんな風にユカをトランクに詰めて、捨てようとしたんだ」
「嘘・・・そんなこと・・・」
「事実だよ」

健一郎は、弁解したいのかウーウー唸り続けるミヅキをトランクから起こすと
そのまま穀物袋でも運ぶかのように抱え上げ、肩に担いだ。
「ったく重いな。少しはダイエットしろよ」
誰かが言ったセリフを、そのまま本人に返してやる健一郎。

「ん?」
その時、彼は妙な匂いに気づいた。
女が興奮した時に発する、独特の性の香り。
匂いの元は、顔の横にあるミヅキのスカート奥からだ。

「なんだこいつ。聞いてただけで、もう濡らしてるぞ」
「んんっ!」
「それとも俺達のを聞いて、一人でしてたのか?」
淡い青のスカートがパッとめくり上がり、パンティについた
沁みを確かめられ、ミヅキは唸り声を上げて暴れだした。
かなりの量がべっとりと滲み、生地が貼りついてしまっている。

「おいおい、そんなに動くと落としちまうぞ」
「んー!んー!んんんっ!」
聞く耳も持たず、芋虫のように暴れ続けるミヅキ。
「なんだ?ここがどうかしたのか?」

意地悪そうに聞く健一郎の指先は、布地の上から的確に
ミヅキの淫核を捕らえ、つまんでコリコリといたぶっていた。
「ふんんー!んんーっ!」
「ここか?この固いのがどうしたんだ?」
肩の上の玩具がすでに絶頂寸前にまで追い詰められているのは分かっていたが
彼はわざと知らないふりをしていじり続ける。

そして、布越しに肉粒をつまんだまま、強めに震わせると
不意にミヅキは暴れるのを止め、足をぎゅっと曲げたまま硬直した。
「んんっ!・・・・・・・・・・・・」
全身を固く強張らせ、ぶるぶるとわななくミヅキ。
それが数秒続いたのち、健一郎が指を離してやると
彼女の肉体は足先からゆっくり弛緩していったのだった。

 ふぅふぅ鼻で荒い息を立てるミヅキを
健一郎は背もたれのついたイスに座らせてやった。
姿は可愛らしい人形のようだが、その目は憎々しげに健一郎を見上げている。

「はは、いい目だな」
冴以外の者にイかされた恨みに、ミヅキの内心は煮えたぎっていたが
縛られている今では何もすることができなかった。
もし、彼女が縛られていなかったら、まだ寝ているであろうユカへ
とんでもないことをしでかしただろう。

ミヅキが逃げないよう、彼女をイスの後ろに固い結び目で固定してから
健一郎は肩越しに優しい声で囁いた。

「ところで、お前のお姉さまの悶え具合はどうだった?」
「・・・・・・・・・・・・」
何も言えず、おとなしく黙るミヅキ。
その言葉に冴はようやく情事の声を聞かれていたことを思い出した。
「あ・・・・・」
顔を両手で覆って冴が恥らう。
「全部・・・聞かれてたのね」

ミヅキは、冴が自分に対し隠し事をしていたのが悲しかった。
おそらく健一郎と顔を会わせないようにしていたのも
この秘密のせいに違いない。

計画を話し合っていた最中の違和感も、きっとそれが理由なのだろう。
冴は、彼を人材として欲しかったのでなく、男として欲しかったのだ。

「返事は無しか、まぁいい。冴、それじゃ続きだぞ」
「ちょっ! 終わりじゃなかったの!?」
「当然だろ? 今までのは、お前が俺を騙していた罰。
 これからのは、こいつの管理不行き届きの罰だ。
 お仕置きは始まったばっかりなんだよ」

残忍な視線で獲物を睨みつけながら、健一郎は再びベッドへ近寄っていった。
「う・・・・・・」
ミヅキの手前、みっともなく許しを請うこともできず
ましてや全裸で後手に縛られたままでは逃げることもできず
冴は、黙って彼の刑罰を受け入れるしかなかったのだった。


「あーーーーーーーーーーっ!だめ!もうダメ!あーーーーーーっ!」
指と舌によって送り込まれる快楽が、幾度も冴を絶頂に導いていた。
淫らな叫び声。汗だくの全身。そして、メスそのものの淫靡な芳香。
健一郎はさっきのような焦らしは一切せず、ただひたすらに
彼女を責め立て、ミヅキの前で半狂乱な淫女姿を披露させた。

「ほら、あいつが見てるぞ。いいのか?そんなにイきまくって」
「ダメ!ダメなの!もぅ!ああ、また!」
ミヅキに向けて見せつけるように、股を限界まで開かせる。
両手の二本指を差し入れて左右にこじ開けるように引き
奥が見えそうなほど肉壁を開いて掻き出すようにえぐる。

「おい、しっかり見ていないと、お姉さまがもっと酷い目に遭うぞ」
椅子に座った唯一の観客が目を閉じていると
健一郎は脅しをかけ、冴に一段と甲高い悲鳴を上げさせた。
「こいつはな・・・ほら、この奥あたりをこねてやると・・・」
「ひぃっ!あっ、ダメっ!いいの!そこいいのぉっ!」
夫婦の営みも、冴優位でしていると思っていたミヅキに
精神的ダメージを与えながら、冴への性罰は続いていく。

「ぁあ、ダメ!そこは!よ、よして!」
幼児のような半泣きの声で、冴は哀願と陳謝を繰り返した。
「これは罰なんだ、しっかりアナルに受け入れるんだな」
固めのプチトマトが3個入ったコンドームが責めに加わる。
「ひぃっ!・・・・・・あっ!・・・・・・はぅぅ!」

一個ごとに縛られている小さな結び目とトマトの小玉は
うつ伏せになった冴のアヌスへ埋没していき、ゆるゆる引き抜かれた。
そのたびに、彼女の全身からさらに汗がふき出し、淫らな叫びが寝室に響く。

前の秘口に入れた二本の指が、悲鳴に合わせてきゅうきゅう締められる感触を
楽しみながら健一郎は冴に語りかけた。
「ほら、お前の付き添いが見てるぞ。尻で感じてるのを見てるんだぞ」
「ぁあぅっ・・・見ないでぇ」
「おい、目を逸らしたら分かってるな?」
びくびく痙攣する太ももや、ぬるりと引き抜かれるプチトマトの玉を
ミヅキは悲しそうに見ていた。見ていたくはないのだが
健一郎の脅迫で、目を閉じる訳にいかない。

 冷酷に徹し責めを続ける健一郎が、効果的な責め言葉を探す。
そして幾つかの言葉弄りの後、ふいに健一郎は冴にとって
決定的なとどめを口にした。

「実はな冴。お前とこういうことをするのは、これで最後にしたいんだ」
「え・・・?」
意味が理解できなく、いや信じたくない故の問い返し。
「慰謝料なら払う。もう別れよう」

よりを戻そうと騙した罰に、離婚を突きつけるのは
冴にとってかなりの痛手であろう。

「そ・・・そんな、嘘!」
「嘘じゃない。俺は本気だ」
「ああ・・・お願い、慰謝料なんていりません!
 なんにもいりません。だからせめて、もう少し待ってください!」

 泣き出しそうな声で哀願する冴に、健一郎はひどく驚いてしまった。
利を一番に求めてきた彼女が、そこまで言うとは思ってもみなかったのだ。
それほど望まれている。自分は彼女をここまで変えてしまったのだ。

忘れかけていた罪悪感を思い出し、健一郎の胸がズキンと痛んだ。
そして冷静になった彼は、今の自分がしている行為を振り返ってぞっとした。

 俺はいったい何をやっているんだ?
 これじゃ昔の自分そのままじゃないか。

 相手を陵辱し、屈服させることだけに喜びを得るのはもうやめたはずだった。
 愛を知り、愛し合う喜びを学んだはずだった。
 そして愛するユカを傷つけられた仕返しをしていたはずだった。
 じゃぁ今の自分は何なのだろう?

 愛を知らない頃の自分と、まったく同じじゃないか!

泣き続ける冴の姿に、我に返った健一郎は
自分がやってしまった事の過ちに気がつき、後悔した。
「・・・わかったよ。離婚はもうちょっと後にしよう」
結局、その罪悪感のために、冴との決定的な別れは引き延びたのだった。

「ただし、お前と寝るのはこれで最後にしたい。それでもかまわないか?」
「あぁ・・・わ、わかりました」

安堵と、残念な感情が入り混じったような返事を冴がした。
「よし、いい子だ」
「は・・・はい、ありがとう・・・ございます」
「じゃぁ、最後だからな。可愛がってやるぞ」

アヌスを責めるプチトマトを抜いてやり、ベッド脇のゴミ箱に放ると
健一郎は冴の腕を拘束していたバスローブの戒めを解いた。
縛られたせいで、血の巡りが悪くなった腕を軽くマッサージしてやり
その手がそのまま愛撫へと移る。心地良さそうに呟く冴。
「んふ・・・・・あ・・・・」

そして健一郎は、仰向けに転がした冴の太ももへ口づけを与えると
クリトリスに軽くキスをしてから口に含み、優しく舌で転がし始めた。
「はっ、あ・・・はぅぅん!そこぉっ!」
とろとろに濡れた秘肉の穴にひとさし指と中指が差し入れられ
彼女の奥に潜んだ泣き所をよく心得ている指先で丁寧にこね回す。

「あ!・・・はぁぁっ!ぁああっ!いい!」
さっきとは明らかに違う、歓喜の悶え声。
悦楽を求めていやらしく持ちあがり、くねる腰つき。
恥じらいを忘れた冴は、健一郎の頭へ両手を添えながら
喜びの渦に巻かれ、快楽に没頭していった。

「くっ!・・・は!・・・も、もっとぉ!ああぁっ!」
声に答えるように、指と舌の責めが速さを増し
くちゅくちゅと粘り気のある水音が激しくなっていく。
「んっ!イく!イく!あぁ、イっちゃうぅ!」
冴の痙攣が激しくなっていき、オーガズムの警告を始めた。

強く、弱く、弱く、また強く。彼女を知り尽くした責めのリズムに溺れ
緩やかに昇りつめていく。快楽が限界ぎりぎりまで蓄積されていき
そして、臨界点を突破して絶頂がどっと弾ける。

「ひっ!あっ!あああぁっ!ああああああっ!ああぁーーーーーーーーーっ!」
長く引きずるような喜びの悲鳴。しばらく余韻を残しながら
冴は健一郎から与えられる最後の快楽を味わったのだった。


ミヅキは、冴が完全に果ててしまうまで、彼女をじっと見つめていた。
自分の主人である冴を弄ぶ健一郎を憎々しく思ったが
心のどこかで好きな相手を翻弄できる彼を、羨ましくも思っていた。

「そういえば、ミヅキがそのままだったな」
「あ・・・・やだ」
見られていたのを思い出して冴が恥じらう。

「ミヅキ、ごめんね。あたし・・・本当はこんな女なの」
素直な言葉で冴は彼女に謝った。
だが、彼女はどんな態度をとれば良いのか分からないらしく
うつむいて視線を逸らしたまま、ただじっとしていた。

「それじゃ、後はたのんだぞ。俺はユカと寝るから」

縛られたままのミヅキを冴にまかせた健一郎は
それだけ言い残し、部屋から出ていった。

隠していた性癖、翻弄され悶える主人の姿
全てが剥き出しになった二人の関係がこれからどうなるかは
健一郎にも予想がつかなかった。


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