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『わがままな愛情』 セイドメイドシリーズその5

byオゾン

2章 「可愛い独占欲」

 小高い山の中腹にある桐ノ宮邸。
いつもと変わらぬ静けさに包まれた山林には
緩やかな風が起こす葉ずれの音と、時折思い出したように
甲高い声で鳴く鳥の声以外は何も聞こえない。
昔、とある金持ちが自然なままの静けさを求め
山林の中に造られた家屋敷。それがここだった。

『リリーン!・・・リリーン!・・・』
何も変わらず終わろうとしていた午後の静寂を
けたたましい電話のベルがかき消す。
「はい、桐ノ宮でございます」
数回のコールの後、受話器を取った老執事は、幾つかの会話を交わすと
それを書斎部屋にいる屋敷の主へと転送した。

「ああ、なんだ君か」
受話器から聞こえる声に屋敷の主、健一郎が懐かしそうな声を上げる。

「誘いは全て断ると言ったはずだが・・・」
ここ最近、会社からの執拗なコールにうんざりしていた健一郎は
そういう電話は全て断るよう、老執事へ伝えたはずだった。
だが、老執事は自分の裁量で主人へ電話を受け渡したのだった。

「・・・・・ああ・・・・・ああ、まぁ会うだけならいいが」
メイドのユカはその会話をすぐ傍で聞いていた。ソファーに寝転がった健一郎が
彼女の太ももを膝枕にしているので、話は嫌でも耳に入る。

「ちょっと待ってくれ」
健一郎は受話器を手でふさぐと面倒臭そうな表情をさせ、ユカを見上げた。
「また会社からお誘いだ。今度は社長秘書まで出してきたぞ」
「そうなんですか?」
「ああ、彼女が俺に会いたいそうだ」
「?」

どうしてそんなことを自分に言うのだろう?
嫌な予感と共に湧いたユカの疑問を健一郎が肯定した。
「あいつはな。昔、俺の女だったんだ」
ピクリと、ユカの表情が引きつる。あからさまな動揺。

「会えば、それなりの行為はするかもしれんな」
膝元から見上げる主人の視線が、こちら様子を覗っているのに
気づいたユカが、ふいっと顔を窓の方へ背けた。
「ユカはどう思う?俺が他の女とヤりたがったら」
唇をきゅっと閉じ、コクリと小さく唾を飲むユカ。

「ご主人様の・・・したいようにしてください」
そっぽを向いた顔で、独り言のように彼女が返答をした。
困惑と寂しさの奥に、怒りを混じえたような複雑な表情が健一郎には見て取れる。
そんなユカの様子を彼は無言のまま見つめ続けていた。

「決まったぞ。明日の午後2時なら来れるか? ああ、それと・・・」
受話器を塞ぐ手を外し、電話の向こうへ話を続ける健一郎。

その会話が終わるまでの間、ユカは話を聞きたくないと
言わんばかりにずっと顔を背け続けていたのだった。

          ◇

 テレビの無い桐ノ宮邸の夜は早い。例えあったとしても
山の影になる屋敷は電波が悪く、まともな放送は期待できないだろう。
そんな訳ですることの無くなった館の主人とそのメイドが
ほぼ毎晩、事にふけるようになるのは当然の結果だった。

夜もふけ、いつものように寝る前の一杯を
寝室へ運んできたユカに健一郎が声をかけた。

「どうしたんだ?」
「な、何がですか」
二つあるグラスには、片方にしかワインが注がれていない。
「今日は飲まないのか?」
「はい。その、あんまりそんな気分じゃないから」

「・・・・・・・・怒ってるんだろ?」
どうして怒っているのか?何に対して怒っているのか?
原因や対象を全て除いた核心の言葉に、ユカがドキリとした。
「べ、べつに怒ってなんか・・・」
「本当に?」

ユカ自身、怒っているつもりはなかった。ただ、なんとなく
もやもやとしたものが胸の奥にあるのは確かだった。
もしかすると、それが怒っているということなのだろうか?
解けない疑問と揺れ動く心のまま、彼女は主人の胸に引き寄せられる。

「昼と同じことを聞くけど・・・」
ユカの背中に手を回した健一郎は、メイド服の腰リボンを
引きほどきながら、彼女の耳元へそっと問いかけた。
「俺が他の女とセックスしたがったら、ユカはどうする?」
「・・・同じです。ご主人様の好きなようにしてください」

他人の心を読むに長ける健一郎にとって、今のユカが抱く心情を
理解するのは書斎の引出しを開けるよりも簡単だった。
心を閉ざし、もう一つの答えを隠しているのは明確である。
ユカも、健一郎が自分の気持ちに気づいているだろうことは判っていた。
だが、たとえ気づかれていたとしても、今の思いを隠さずにはいられない。

「ふふ・・・ユカは本当に可愛いな」
嫉妬の心が抑えきれず、拗ねている彼女の様子を楽しみながら
主人は彼女のメイド服をゆっくり脱がしていった。

「んっ・・・ふぅっ・・・」
おそろいの白いブラとパンティ、そして白いハイソックスだけの姿は
健一郎が好んでよくユカにさせている格好だった。
優しく焦らす愛撫。布に覆われた一番敏感なところをギリギリで
すっと避ける意地悪な指使いに、彼女の理性はとろかされていく。
「あ・・・んんぅ!そこぉ・・・」
思わず求める声を上げてしまったユカが恥じらいに頬を染めた。
全裸にされれば否応無しにタガが外れ、快楽をむさぼることができるのだが
下着姿のままではどうしても吹っ切れず、理性が邪魔をするのである。

「そこってここか?それともこっち?どこなんだ?」
「はンっ!や・・・ああっ!」
にやにやしながらメイドが恥じる姿を楽しむ主人。
白いパンティのしみの上、ぽつりと一箇所だけ膨らんでいる
快楽の中心を徹底的に避け、健一郎の指が円を描く。
「ふぐぅ!ううんっ!」
むずがるような喘ぎをさせ、どうにもならないもどかしさにユカは嘆いた。

「いじって欲しいんだろ?」
クリットのすぐ脇をつつきながら健一郎が問い詰める。
左右の膝頭をくっつけたまま足を曲げ、赤ん坊のオシメを交換するような
淫らな格好をメイドにさせ、主人が彼女を追い込んでいく。
「自分でパンティをめくるんだ。そしたらちゃんとしてあげるよ」
「あ、あぅぅ・・・」

ハイソックスもブラもそのままに、自分の意思でパンティを脱ぐ。
しかもそれは、自らが望む淫らな褒美のためなのだ。
泣きたくなるほど羞恥心を刺激する無慈悲な命令だったが
ユカの内にある弄られたくてたまらない欲望がそれを無視させてくれなかった。

「ぅううっ・・・ぐすっ」
半泣きになりながらも、ユカは仕方なくパンティへ手をかけると
屈脚させた太ももの外側に両手をそえ、白い布をゆっくりずらしていった。

後ろの小さな菊穴から順に彼女の恥ずかしいところが露わになり始める。
めくり上げられたパンティが彼女の可愛い秘部から離れ、つぅと糸を引く。
火照った秘口からむわっと蒸れ溢れる性臭が健一郎の欲情を刺激した。
「これで・・・いいですか?」
足を曲げているため、膝の裏までで止まった白い布は
ユカの奥から涌き出た蜜により、中心がキラキラときらめいていた。

「上出来だ。すごくいやらしい格好だぞ」
「あっ!あっ!ありがとうござい・・・あんんっ!」
剥き出しになったクリットへ健一郎がコリコリとご褒美を与えると
その下のぬめったひだ肉が嬉しそうに羽ばたき、丸いヒップも
ピクピクひくついていやらしい喜びを表す。

「ユカ、もう一度聞くぞ」
片腕で彼女の膝を固定し、もう片方の手で彼女のクリットを
責め続けながら、健一郎がメイドに向かってまた質問した。
「俺が他の女とこんな風にしてたら、どう思う?」
「あっ!はぁあっ!嫌ぁ、聞かないでぇ!」
ぷっくり膨れた肉芽をつまみ、キュッキュッと優しくつねりながら問い詰める。
「はんん!ふぅぅん!」
「ほら、どうなんだ?こんなこと、ユカ以外の奴にしていいのか?」
「んんっ!」
思わずこぼれそうになる答えを、ユカは手で口を塞いで押し留めた。
そんな彼女の様子を楽しみながら、健一郎は膝に引っ掛かっているパンティを
ユカのふくらはぎから抜くと、膝を割って彼女へ覆いかぶさった。

そして、すっかり準備の整った肉棒をぬめる秘口に当てがうと
そのまま静かに腰を下ろし、ユカの奥へじわじわ埋没していくのだった。
「はぅ!はぅぅぅぅん!」
ぬぅっぬぅぅっと、ゆっくり侵入される感覚にユカが思わず声を上げる。
奥まで満たされるたびに全身から汗が吹き出し、甘い性臭をあたりへ撒き散らす。

「ああっ!ご主人様ぁ!あああっ!」
「言ってごらん。怒らないからわがままになってごらん」
優しく髪を撫でられる感触と耳元で囁かれる主人の声。
身も心も、奥まで全て彼の虜となってしまったユカが
最後の理性をふつりと途切れさせた。

「いやですぅ!他の人とするなんていやです!」
「はは・・・ほら、やっぱりそうなんだろ?」
「お願いします!あたしだけを、あたしだけを見て下さい!」

 健一郎はユカの心を見抜いていた。わがままを言って
主人に嫌われたくないという想いがあるのを判っていた。
隙の無いほど理想的で優しいユカの性格は、嫌われたくないという心の
裏返しである。優しくて、優しすぎて、そして嫌われるのが怖くて
誰に対しても良い子を演じてきた彼女が、なりふり構わず
わがままになれるのは、こんな時だけなのだ。

「どうしても駄目なんだね?」
「ダメ!他の人としちゃダメェ!」
「わがままだな、ユカは悪い子だな・・・」
「うぅっ、申し訳・・・ぐすっ、ありません。でも、でもぉ!あたし!」
泣きながらもユカは主人へ抱きつく腕を解こうとしなかった。
まるで、誰にも取られまいとするかのように必死な姿だった。

「ユカは悪い子だ。ほんとうに悪い子だ・・・」
健一郎は彼女を抱き返しながら肉棒で奥を貫くスピードを早めていく。
だが、それは乱暴に罰を与えるので無く、行為に愛おしさを込めた
優しさ溢れる注挿であった。

「あっ!あっ!ご主人さまぁ!ああっ!」
「わがままな悪い子だ、いけない娘だ・・・」
ユカの頭を抱きしめ、彼女が一番大好きな腰を回して突く動きで
健一郎は激しく責め立てる。そして、ユカが絶頂の兆しを見せ
昇り始めようとした寸前、彼は耳元で自分の本心を打ち明けた。

「でも、そういうユカが大好きだよ」
「あぅぅ・・・ご主人様ぁ!ご主人さまぁ!あっ!ああっーーーーーっ!」
最愛の主人に愛の言葉と許しをもらったユカは
悦楽と感激の混ざった喜びにむせびつつ、果てていったのだった。

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