前の章へ 本を閉じる エピローグへ 


『わがままな愛情』 セイドメイドシリーズその5

byオゾン

第4章「淫欲の対面」

「それでは、やはり・・・」
「ああ。あいつの下で働く気はない。この前のは、ほんの気まぐれだ」
普段と変わらぬ穏やかな午後。書斎部屋の中央に備えられたソファーに座り
健一郎と怜子がテーブル越しに話していた。

怜子の伝える会社側の条件は、かなりの妥協がされており
健一郎の待遇は、交渉以外は自宅待機でよく、しかも
毎月の高給は必ず保証する、という破格のものだった。
社長の地位を剥奪した彼を勧誘し、また会社に戻らせるのである。
普通に引退した場合の役職、相談役と同じかそれ以上の待遇は当然であろう。

「あの・・・」
「くどいな、笹川君」
心の距離を示すように、健一郎はわざと彼女を苗字で呼び
視線を窓へと向けたまま、苦虫顔で腹を押さえていた。
彼女の顔を見ないようにしているのは、情が出るのを恐れている訳ではない。
自分の体調の悪さを隠している為である。いわゆる、精神的な嘔吐感だ。
が、健一郎は別に怜子が嫌いではない。問題は会話に出てくる菊地社長だった。

欲望や怒りなど、負の感情に溢れる菊地は、健一郎の最も苦手な人物なのだ。
表情や言葉の節々に見られる妬み、憎しみは、いつも彼に吐き気を起こさせた。
思い出しただけで毒を吹きかけられたような錯覚さえするのである。

「健一郎様が菊地社長を嫌いなのは、知っております」
怜子は健一郎の心の病を知らなかった。彼がこのことを
打ち明けなかったせいで、時々体調が悪くなる程度にしか思っていない。
ただし、怜子は健一郎の性癖ならよく理解していた。
こんな場合、いくら目の前に金を積んでも彼が動かないのは心得ている。

「そのかわり、あたしで良ければ何でもします。その覚悟は、あります」
「覚悟?」
「はい・・・・・好きなようにしてください」

コトリ、と赤い携帯電話がテーブルに差し出された。
怜子がここへ来るまで車内でいじっていたものだが、健一郎はそれを知らない。
いったい何だというのだろう?いつでも連絡していいという事か?
不可解な疑問を浮かべつつ、健一郎はそれを手に取った。

一目見ただけではただの小柄な赤い携帯であるそれは
よくよくみるとボタンの部分には数字が書かれておらず、かわりに
複数の英文字と簡易記号が規則正しく並んでいた。
『 Stop 』『 Low 』『 Mid 』『 Hi 』電話のマーク、雷のマークなどなど・・・

「なるほど」
その文字と記号の意味をすぐに察知した健一郎は、意味深な含み笑いを浮かべると
右下の辺りにある『 Low 』と刻印されたボタンをおもむろに押した。

『ピッ!』
「んっ・・・」
ぴくんっ、と瞬時に怜子の腰が反応する。
「これを押すと、どうなるんだ?」
「それは・・・中のモノが、振動するようになっています」

一見携帯電話のようにカモフラージュされたそれは
実は遠隔バイブレーターのリモコンなのだった。
怜子はバイブの本体をすでに自分の奥へと仕込んでいたのである。
遠隔操作のオモチャ。離れた相手の心と肉体を自由にできるタイプの淫具は
健一郎が好んで、よく怜子に装着させていたものだった。

「ふぅん、詳しく説明してくれ」
「は・・・はい」
タイトスカートの前を押さえ、小刻みに震えながら怜子が機能の説明をし始めた。

黒いショーツと一体型の遠隔バイブは、本体の電波が届く100m以内なら
どこでもコントロールでき、イヤホンを繋げば卑猥な指示も可能なこと。

右列のボタンは内部の振動で、一番下の停止も含め、4段階に強くなり
中央のボタンはクリトリスへの振動でこれも同じく4段階なこと。
左列のボタンは奥をスイングさせ、左右の回転と停止に加え
ランダムに回転を変化させるモードもあることを怜子は解説していった。

「ランダムは・・・ファ、ファジー制御で不規則に回転を、んくっ!」
怜子の話を聞きながらコントローラを操り、健一郎は電子音を鳴らせる。
「なるほど。目を閉じても説明できるということは、本当に入っているようだね」
薄目を開け、彼の視姦を確認した怜子が眉をひそめて恥らい、また瞳を閉じた。

「こっちの離れてついてる雷マークは?」
「んぁうっ!」
突然、鞭で打たれたように怜子の背中が反り返る。
「それは・・・懲罰用です。ヴァギナへ直接、電気ショックが・・・」
「ほぅ、俺の知らない間にずいぶんと進化したもんだ」
液晶モニターに映るバイブの状態を確認しながら、感心した健一郎がつぶやいた。

「ここに来るまで入れっぱなしだったのか?」
「は、はい」
「車の中でもか?俺がこれを使うのを想像してたのか?」
「そうです、その通りです」
タイトスカートを両手で押さえ、淫らに腰をくねらせる怜子。
「淫乱なやつだ、自分から求めにくるなんて」
「ああ、健一郎様ぁ、おねがいします」
うっとりした表情で怜子はブラウスの前ボタンを上から外していった。
上下で揃えているらしい黒いレースのブラが、中から顔をのぞかせる。
「確かに、このまま返すのも可哀想だな」
にたりと笑う健一郎。だが、どう言う訳か彼はバイブを全てOFFにした。

「だがな笹川くん。今、お前とする訳にはいかないな」
彼の言った意味がわからず怜子は疑問を浮かべていると
健一郎は不意にドアの向こうへと話しかける。
「聞いてるんだろ?ユカ」

ユカとは誰のことだろう?怜子が疑問に思った途端
カチャリと扉のノブが回り、紺色のメイド姿の少女がおずおずと出てきた。
あわてて怜子がブラウスの前を閉じる。

「あの、どうして?・・・」
「来客へのお茶がまだ出てきていない。ユカが持ってくるなら
 もうとっくのはずだ。他に急ぐ用もないからな」
健一郎は気配や勘でなく、推論だけで彼女の存在が判ったのである。
「ドアを開けるタイミングを計ろうとして、盗み聞きしてしまったんだろ?」
「あ・・・・はい、そうです」

健一郎はユカをテーブルの脇へ呼ぶと、彼女を怜子へ紹介した。
「紹介しよう。こいつが今の夜の相手だ」
健一郎の冷たい言い方に、少女がびくっと肩を振わせる。
恋人と言ってくれない事実がユカの心をチクリと刺した。

「だからな、笹川くん・・・・」
健一郎はすっくと立ちあがると、ユカの後ろへ回り
「君はもう要らないんだ」
と、残酷な言葉を吐くとエプロンの上からメイドの胸をまさぐりだす。

「あっ!やっ!」
布地の下に尖るわずかな突起を見つけられ
きゅっとつままれる刺激にユカが抵抗し、暴れた。
「やめて!やめて下さい、ご主人さま!」
「ダメだ。盗み聞きのお仕置きだ」

突然のことの成り行きを、怜子は唖然と見つめるしかなかった。
「んっ!?」
その時『ブン』と怜子の奥で音がし、バイブが再び活動を始めた。

          ◇

 書斎室で二人の女性がかすかな喘ぎ声を奏でていた。
一人は主人の膝の上に抱かれ、服の上から全身をまさぐられているメイドで
もう一人はテーブルの向かいで元社長の操るバイブに悶える社長秘書である。

ユカの閉じられた太ももの間には健一郎の肉棒がはさまり、メイド服の奥で
パンティ越しに秘裂をこすっていた。淫らに繰り返される往復運動により
ユカの理性がじわじわと溶ろけさせられていく。

ペニスによる秘部への摩擦は、指などで受ける刺激とは違い
その快楽の根源は想像力によるものだ。いわゆる性行為への連想が
責められている女性に焦れったさと、妄想による興奮を与えるのである。

「ほら、中に欲しいんだろ?欲しいって言ってごらん」
「そんなぁ・・・」
主人が耳元でいたぶる声に、ユカが喘ぐ。
他人の視線を感じながら欲望のままに求めてしまうのは
ユカにとって羞恥と誘惑の入り混じった屈辱だった。
これが盗み聞きをした罰なのであろう。

だが、その恥ずかしさと苦痛の奥には
自分だけが主人を一人占めしているという後ろめたさに加え
独占による奇妙な優越感があったのだった。
「いやぁ・・・」
快楽、屈辱、喜び、羞恥、優越感。
それらの混ざった困惑の言葉が自然にユカの口から出る。

「ああ、健一郎様ぁ」
怜子はそんな彼女の気持ちも知らず、黒いブラの上から
自らの乳首をつねり、手に余るほどのバストをまさぐり続けていた。

『嘘ですよね?怜子がいらないなんて、嘘ですよね?』
だが、それを口に出すのは怖くてできなかった。
心の中で何度も繰り返しながら、目の前の喘ぐメイドに
自分の姿を重ね、自慰を続けるしかなかった。

「はぅぅん!ごっ、ご主人様ぁ!」
うわずった淫声を洩らしてユカが腰をくねらせる。
パンティはいつのまにかずらされており、閉じた股の間で
彼のペニスが狭間の表を直に擦る音がヌチュヌチュ聞こえた。
「欲しいんだろ?言ってごらん?」
「ほ、欲しいです・・・ください、奥にください!」
恥じらいよりも大きく膨れ上がった肉欲がユカにその言葉を言わせた。
もう、傍で怜子が見ていることなどどうでもよかった。
ただ健一郎に愛されたい、彼を奥に感じたい。それだけだった。

「いいだろう。ただし、彼女の目を見ながらだ」
「あぅぅ・・・はい」
ユカの恥ずかしい入り口を見つけた彼の先端が、ゆっくりとその中へ
身を沈ませていった。怜子の目を見ながらの挿入がユカの羞恥を再び引き起こす。
「あぁ・・・恥ずかしいです」
「でも欲しいって言ったのはユカなんだろ?」
「・・・・・・・・・」
何も言えず恥らうユカの姿を、怜子は終始動きを変えるバイブに喘ぎながら
じっと見つめていた。ソファーから彼女の半身がずり落ち
めくれたスカートの奥から黒い下着姿をあられもなくさらす。
下着の中央では一体型バイブの円底が数センチほど生えた姿を見せていた。

不思議なことに、怜子の心には嫉妬や憎しみの気持ちは無く
目の前で愛されるメイドへ自分を重ねる事に意識が集中していた。
ただ、羨ましくてたまらなかった。

「ふぅっ、ふぅっ・・・あっ、イっ!ダメッ!とめてっ!」
「イきそうなんだな?イかせてやるぞ」
「あぁん!いやぁ!」
主人以外の者にオーガズムを見られるのは、ユカにはとても屈辱だ。
彼の前だけに開放できる素の自分を他人に見られるのは許せないのである。
だが、快楽を知っている身体はどうしても止められない。
スカートの上からクリットをくすぐる健一郎の指が更に追い討ちをかけていく。

「み、見ないでっ!ああっ!だめ、だめっ、ああぁあっ!」
「健一郎さまぁ、怜子も一緒に・・・」
怜子の望むまま健一郎はコントローラーの強さを全て最大にしてやった。
同時に懲罰用の電撃をユカへの激しい突きに合わせ、何度も繰り返した。
ずんずん突き上げる淫らな音がするたび、怜子の奥で快楽の火花が飛び散る。
「ああっ!だめっ!あぁーーーーーーーーーっ!」
「あっあぅっ!電気が、んぁぅ!あぁっ!イくぅっっっ!」
突きと電撃。二つの強い快楽を二人の女性に与え
健一郎は彼女達を同時に果てさせたのだった。

          ◇

「はぁ、はぁ・・・」
オーガズムの終わった室内に、荒い呼吸だけが聞こえていた。
ユカを膝からソファーへ降ろした健一郎はズボンのチャックを上げると
「怜子」
と彼女を名前で呼んだ。声に気づき、とろんとした目を向ける怜子。
「バイブを抜いて見せてみろ」
言われるままに彼女は腰に手をかけ、黒いストッキングと共に
バイブの装着された下着を降ろしていった。
黒いオモチャの棒がズポリと卑猥な音を立て、奥から引き抜かれる。
そして透明な糸を引いたままの淫具を彼女は健一郎に差し出した。

「ふむ、なるほどな」
怜子から渡されたバイブを手に取った健一郎はじっくりそれを観察し、感心した。
黒い淫棒は胴体がゴムでできており、ゴツゴツした外見をしている。
亀頭と付け根の部分が鈍く光る銀色の金属なのは
多分これで電気ショックを与えるからだろう。

「健一郎さまぁ、怜子にも・・・」
股を広げ、怜子が甘い声でねだる。ユカがいるのも気にせず
艶っぽい顔で股を広げ、性器の奥まで彼にさらしている。

健一郎は彼女の呼び声に顔を上げると、ふいにユカへとふり返った。
ユカは、捨てられそうな子犬のように怯えた目をさせながら
愛する主人の様子をうかがっている。
そして泣き出しそうに眉をひそめると
黙ったまま、きつくまぶたを閉じたのだった。

メイドの姿を眺め、ふっと口の端に笑みを浮かべた健一郎は
改めて怜子へ向きなおすと、待ち焦がれている彼女へ向かい
残酷な言葉を放った。

「さっきも言っただろ。残念だが、お前は抱いてやれんな」

 前の章へ 本を閉じる エピローグへ