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『心の世界、夜の世界』

BYオゾン

第2章「真の闇」

 光の全く届かない真の闇の中で、赤黒く光る怪物の目だけが見える。
じりじり、じりじりと音も立てずにその目があたしにゆっくり近づいてくる。

「い・・・いやぁ!」
あまりの恐怖にあたしは叫び、急いで元来た道を駆け戻る。
「あれ?・・・・あれ?なんで抜け出せないの!?」
ほんの十数メートルしか森に入ってなかったはずなのに
あたしはいくら走っても、その闇の中から脱出する事ができなかった。

「ぐ、ぐへへへ。む、む、無駄だよぉ。」
「いや!いや!いやぁ!」
走りにくいサンダルを捨て、家へと向かってどんなに一生懸命走っても闇は延々と続く。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
『どんっ!』
「あぅっ!」
すっかり息のきれた時。あたしは何か大きなものに、どすんとぶつかってしまった。
間髪入れず、その大きなものはあたしの体をがっしりと抱きかかえ
身動きできないようにしてしまう。

「お、おお嬢ちゃん。おと、おとしものだぉ・・・」
赤黒く光る目がにやりと笑う。投げ捨てたはずのあたしのサンダルがその薄明かりに
照らされてぼんやりと見える。あたしは真の闇に捕まってしまったんだ。
「ひっ!・・・・・・・」
背筋にぞっとしたような冷たい感覚が走る。
恐怖のあまり声も出せず、あたしは怪物に抱きかかえられたまま震えていた。


 びりびりと布を引き裂かれる音があたしに絶望を感じさせる。
ノースリーブのパジャマとショートパンツのみで外に出た事をあたしは後悔した。
「いやぁ!やだ、やだやだぁ!」
何度も抵抗してはみたけど、怪物の力の前ではそれはひどく空しいものだった。

最後の一枚。ショートパンツの下にはいてたお気に入りの水色のパンティも
剥ぎ取られ、あたしはすっかりまる裸にされてしまった。

鋭利な爪をお腹に感じる。尖った爪先があたしのお腹を撫でている。
「お、お、俺はな。ザンム。惨夢ってんだ。お、俺と一緒に苦痛を、味わおうぜ。
 え、永遠の苦痛をなぁ」
牙のような爪先に力がこもり、柔らかい皮膚をぎりぎりとひっかき始めた。
ぬらぬらする舌があたしのほっぺをちろりと味わってから全身を舐めていく。
「ああぁ!いやぁ!助けてぇ!ご主人様ぁ!」
「お、おれが今の、ご、ご主人様なんだよぉ・・・」
闇の爪があたしのお尻に傷をつけていく。どす黒い太い舌があたしの脇腹を舐め上げていく。

 ご主人様の本で読んだHな行為とは全く違い、それには快楽などかけらもなく
ただただ気持ち悪い、冷たくぬめぬめとするだけの感触だった。

「こ、こ、殺してやるぜ。何度も、なぁんども殺してやるぜ」
巨大ななめくじに這いずりまわられるような嫌な感覚。
背中には何度も爪をぎりぎりと突き立てられ、幾本もの傷痕ができていた。
こんな事が一生、いや永遠に続くのかと思うと恐怖と絶望であたしは叫んだ。
「いやあぁぁぁぁぁあっ!」
普段のあたしならこんなすぐに諦めるなんて事はしなかっただろう。
けど、この闇は心すらも支配するのか、あたしはその時一切の希望を感じていなかった。

 惨夢と名乗った怪物はあたしの叫び声を無視して
さらに体中に引っ掻き傷を作り、ねっとりと舌を這い回す。
強引に両の胸を寄せ上げて作った谷間に触手のような舌をぬるぬると割り込ませ
そいつは、あたしのむき出しのおっぱいの感触を思うがままに味わっていた。

 そしていつのまにか全身を引っ掻く腕が幾本にも増え、あたしの皮膚を突き破って
肉に届くかと思われるほど、あちこちを強くぎりぎりと傷つけ続けている。

「ううっ、うううっ・・・うわあああぁん!」
涙が止まらない。悔しくて、悲しくて、苦しくて、痛くて、あらゆる負の感情が
あたしの心いっぱいにあふれ、どうしようもない位の絶望を感じている。

 おっぱいに満足したのか、その怪物は舌をそろそろ降ろしていき
あたしのお腹をぬるぬると舐めていく。
内臓まで届くような痛みをつけた傷痕を舐め、あたしにひりひりする感触を与えていた。
そして更に舌先はあたしの恥ずかしい部分へと近づいていく。

「ああっ、嫌っ! やだぁ!駄目ぇぇぇ!」
どんなに抵抗しても無駄だった。闇の中から現れる幾本もの腕があたしの両腕と
両足をがっしりと掴み、もがけばもがくほどその爪先を皮膚に食い込ませる。

そしてとうとうあたしの一番大事なところに怪物の舌が触れてしまった。
「ああ・・・うううっ!」
「ここ、こ、ここが、嫌なんだろぉ?」
快楽なんか何も感じなかった。ただ気持ち悪いだけのぬめる刺激。陵辱される嫌な感覚。

「お、おやぁ? お前、ま、まだ・・・」
「あっ、あうっ!」
恥ずかしい穴の入り口をカリッと爪先が引っ掻く。怪物は、あたしがまだ未体験な事を知ると
とても嬉しそうな低い笑い声をあげた。涙がぽろぽろと自然にこぼれてしまう。

「そ、そうか。前の主人には、ま、ま、まだ。してもらって・・・なかったんだ、な」
「お願い! そこはよして! あたし、初めてはご主人様にって!・・・」
「今はもう、お、俺が主人だよ!前の主人なんか、もも、もう忘れちまいな」
「あんたなんか、あんたなんか嫌よぉ!」
黒い怪物が、あたしの上にのしかかってくる。あたしのおへその下。下腹部のあたりに
何か太い棒のようなものが触れている。
 そして怪物がゆっくり体を下げる毎に、その太い棒の先端がずるずるとあたしの
お腹の表面を下へ下へと降りていった。
「嫌ぁ!いやぁ!絶対イヤァァァァァ!」
どんなに泣き叫んでもその進行は止まらない。あたしの恥ずかしいアンダーヘアーの
生えているあたりを通りすぎ、なおも先端は亀裂めがけて進み続ける。
「嫌いよ!きらい!あんたなんか、だいっきらいよぉ!」
「ふ、ふ、ふひひ、嫌われる苦痛ってのも中々だな。
 でも、ででも、別に嫌がる事なんか、ないぜぇ。 オ、オ、オゾンとか言ったっけ?
 なんたってお、お、俺はおまえの、前の主人の・・・」

 怪物の肉棒があたしの入り口に触れ、今にも侵入しはじめるかと思ったその時だった。

「ヤスミ!」
何かの眩しい光が真の闇を照らし、周りがぱっと輝く。
突然響くその声に、あたしはハッとなって我に帰った。

「ご主人様!?」
懐中電灯のライトだろうか? その棒状の光が闇に触れた途端
じじっと蒸発するかのように霧散し、真の闇がかき消されて夜の森が戻ってくる。
そして、その怪物は光を浴びた途端、まるで火傷したかのように慌ててあたしから飛び退いた。
「ちちぃ!」
残念そうに舌打ちし赤黒い目を未練に細めると、森の奥深く
漆黒の闇の中へと、音も立てずにその怪物は逃げていってしまった。

「あれほど言ったのに、だめじゃないか!」
あたしはご主人様の声を聞くと、安堵のあまりそのまま
ふっと気を失ってしまったのだった。

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