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『ひとときの夢』 セイドメイドシリーズその3

byオゾン

第4章 「陵辱と奉仕」

「教えなさいよ! いったいどうやって彼を誘惑したの!?」
冴が声高に叫ぶ。
「誘惑だなんて、そんな・・・」
ユカは上ずった声でうろたえる。

 狭い部屋の中、後ずさるユカに冴はつかつかと詰め寄っていく。
メイドと言えど恋敵同然の相手に体を気遣われたのが
冴のプライドに引っかかったのだろう。
「この泥棒猫! どうせ彼の財産が目当てなんでしょ!」
「違っ・・・あたし、そんなんじゃありません!」
「じゃぁ、何だっていうの?」
「あたし、ご主人様をちゃんと愛して・・・」

 妻の前で言うべきでない言葉によって、冴の頭にますます血が昇った。
「愛してですって?ただの奉公人の分際で!」
「もっ、申し訳ありません。でも・・・」
「そんな言葉で彼が誘惑されたなんて、とても思えないわね!」
冴の剣幕に押され、ユカの体は更にじりじりと後退していった。

「あっ、きゃっ!」
背後のベッドに気づかなかったユカがシーツの上に倒れる。
「へぇ、そぉ? それが答え・・・」
ユカを見下ろしながら意味深な言葉を冴はつぶやいた。
「その、乳臭い体で彼を誘惑したのね?」
「そんな!違いまっ・・・やっ!」
彼女の反論を無視し、冴はユカに襲いかかった。

 ベッドに倒れる彼女へ覆い被さった冴が、相手の細い腰に手を回す。
そしてメイド服の腰に飾られたリボンを解くと、抵抗するユカにかまわず
器用に彼女の手首を後ろ手に縛り上げてしまった。
「だったら見せてもらうわよ。どんな体で彼を誘惑したのか」

そのまま冴はユカの体をエプロンの上からまさぐり始めた。
「やっ!やめて下さい、奥様!」
メイドの哀願を耳にもかけず、冴は彼女の全身に指を這わせる。
「あっ!嫌ぁっ!お願いします!やめ、やめて下さい!」
細い腰つき、小ぶりの乳房、のけぞる背筋の感触を布越しに楽しんでいた両腕が
続いて脇腹からメイド服の中へと潜っていった。
「ふふっ、置いてきた世話役の娘を思い出すわ・・・」
まだ十六である少女の、花蜜のような若い香りを楽しみながら冴がそうつぶやく。

 冴の両腕が這い回る感覚に、ユカは恐怖を覚えた。
衣服を脱がされず、そのまま中へ指を潜り込まされているぶん
より『侵入されている』という感覚が明確に感じられるのだ。

主人以外の誰かに肉体を陵辱されるおぞましさの裏に
的確に感じる場所へ滑っていくしなやかな指先の悦楽がユカの心を玩ぶ。
その指が彼女には皮膚と肉の狭間に侵入し、這いずり回るヘビのように思われた。

縛られた腕を何とか引き抜こうと抵抗を強めるユカ。
「んっ!・・・・くっ・・・・・」
だが、少々引っ張った程度では手首の結び目は緩まない。
それどころか力を入れるほど布が肌に食い込み、痛い思いをするだけであった。
「大人しくなさい。ほどこうとしても無駄よ、そういう様に結んであるから」

 脱出は不可能だと悟ったユカが、今度は哀願を始めた。
「あふっ!やっ、お願いします!やめて下さい!」
「あたしはこの家の人間なのよ。あなたの主人の妻なのよ」
指先による愛撫を休めず、冴はそう言った。
健一郎と別れようとしていたはずの彼女が妻の立場を主張する。

ユカの乳首を探り当て、ブラの上から突起をつまんだ冴は
つねる力をじわじわ増しながらユカに言い聞かせた。
「あなたは、主人の妻が言うことも聞くべきじゃないの?」

威圧的な瞳につねられる恐怖。人を屈服させる方法を冴は十分なほど心得ていた。
「でも、でも!あぅっ!」
乳首をきつくひねられたユカが悲鳴を上げる。
「これでも?これでも聞く気はないの?」
ぎりぎりと音がしそうなほどつねり上げる冴。
だがいくら叫び声を上げさせても、ユカは冴に屈しようとはしない。
痛みを耐えながら、時折「御主人様ぁ!」と健一郎に救いを求めるだけである。

「強情な子ね。まぁいいわ、どちらにしてもあなたの意志は関係ないもの」
指の疲れと、つねるのに飽きた事で冴はすんなり屈服を諦めた。
だが、それはユカにとって良い展開に移った訳ではなかった。
かわりに冴は、捕らえた獲物を味わう事にしたのである。

「たっぷり犯してあげる」
冷酷な瞳で、そう一言言い放つ。
『ああ・・・ご主人様ぁ、申し訳ありません・・・』
主人以外の人間に体を玩ばれるという辛い現実に
ユカは半泣きの表情をさせ、心の中で健一郎に謝った。

          ◆

 激しい雨風に打たれる窓ガラスの向こう。夜闇の遠くで雷が鳴っていた。
獣のうなりに似た低い声をさせながら
雷音は次第に近づいてくるようにつぶやいていた。

「んっ、んんっ!」
奪うようなキスで冴がメイドの唇を貪る。
逃げるユカの舌先を冴が追う舌の鬼ごっこ。

「んくぅ!んふっ!・・・・・んっ!」
小さな金魚鉢に入れられた小魚のようにユカの舌が逃げ惑い。
肉食魚の動きを連想させる冴の舌が彼女を巧みに追いまわす。

ユカにとって逃げるのは無意味だった。それどころか逃げれば逃げるほど
口内すみずみまで陵辱される結果にしかならなかった。
溢れた唾液が口元からとろとろ垂れていったが、それを気にしている余裕は彼女に無い。
のど奥までも犯すような舌の蠢きにユカの瞳は次第に潤みを増していった。

「ぷはっ!はぁっはぁ・・・あふぅっ!」
唇を開放され、気の緩んだところを責められたユカが一声上げた。
冴の指が執拗にユカの乳首をコリコリといじり回す。
「ふふっ、ちっちゃな乳首・・・感じやすいのね」
「あんんっ!やっ、やあぁっ!」

 彼女の意識が乳首にいっている内に、冴の左手がユカの背筋や脇腹
ヒップ、太股などの感じやすそうなところを探索し始めていった。

冴の目当ては、健一郎が開発したであろう彼女の性感帯だった。
彼の性癖が変わらなければ、このメイドも自分と同じく肉体の各所を開発され
地雷のように性感帯をあちこちに埋め込まれているはずである。
「あっ!んっ!・・・・あふっ!そこは!」
責める部分を転々と変えて探していくと、時折ユカの腰が
ぴくんとひきつり、しなやかな指の繰り出す悦楽に反応した。
冴の想像どうり、地雷はあちこちに埋められていたのだ。
「ふふ・・・こことここ、こっちにも・・・・」
「あぁんん!やだ!・・・あっ!」
指先の探知器を駆使し、冴は次々とユカのよがりどころを見つけ出していった。

 そしてあちこちの弱点をすっかり見極めた冴が、彼女の全身をいたぶりだす。
「だっ!だめぇ!そこ、弱いのぉ・・・あひっ!」
よく撫でられたであろう脇腹を責め、感じまいと意識をそこに集中させるうち
耳に息を吹きかける。「んっ」と声を出し、首をすくめたところを
反対の耳穴に小指を挿しいれ、そっとくすぐる。
背筋を撫で上げる途中でエプロンの上から乳首を甘噛みし
ひくんと反応した瞬間にショーツ越しの秘裂を撫で上げる。

 人間とは同時に意識できる感覚は二つまでであり
ましてや不意をついた同時責めに反応するのはかなり困難である。

ユカにとって三個所責めは健一郎に受けたことのある責められ方ではあるが
冴のそれは、主人のものとはまた一味違う感覚であった。

 蜜を集める蜂のように転々と位置を変え、休むこと無く跳びまわる指先の責め。
感じまいと、責められている一点に意識を集中した途端
全く別の弱い個所から快楽の不意打ちが襲いかかる。
意識を移した瞬間、また別の弱点を責められ
強い快楽が無防備な心奥にまで届き、ユカを身悶えさせる。
「んっ・・・はっ、あはぁっ!・・・・くふっ!ううっ」
その、微妙に時間をずらした責めにユカが耐えられるはずが無く
しだいに彼女の口からは、絶えず喘ぎが漏れ出すようになっていった。


「ああっ!やっ!はんんん!」
 女同士のむせるような甘い香りが漂う中
いつのまにか、ユカはショーツ一枚の姿にされていた。
冴も自ら衣服を取り去り、束ねた髪も解き放ち、ほんのり赤らむ白い肌や
弱いウエーブのかかった黒髪を惜しげもなくさらけ出していた。
ユカの手首を縛っていたリボンはすでに外されていたが、快楽という名の束縛が
汗ばんだ全身にねっとり絡み付き、冴から逃げる力を失わせていた。

 ショーツの横から差し入れた指先が、包皮の上から優しくクリットをくすぐる。
愛液でぬめる指先がすっと離れたり、きゅっと摘まんだり
次の快楽を予想できない複雑な変化をしながらユカの核心を責め立てる。
快楽にゆがむユカの汗ばんだ顔が、冴の加虐心を更にそそらせた。
「あっ、やだ!やだぁ!いっ、イくぅ!イっちゃうぅ!」
「ふふっ、いいわよ。思いっきりイきなさい」

 玩具だけならまだしも、他人の指によってイかされるのは更に屈辱だった。
健一郎に電動淫具でイかされた時と同じ烙印。
自分の肉体が誰かれかまわずに喜んでしまうという事実を
再度確認してしまいそうな恐怖からユカは思わず健一郎に謝った。
「ああぁっご主人様ぁ!申し訳ありません!」
「くっ、まだそんなことを言う気!?」

 ユカの叫びにむっとした冴が過激に責めを強めた。
乳首をギリギリつねり、クリトリスにひねりを加え、強烈な刺激をユカに与える。
「あーーっ!だめぇ!痛っ!痛い!あっ!いっ、イくぅぅ!」

 刺すような痛みも、興奮しきっている肉体にとっては快楽であった。
きっかけを与えられたユカの全身がびくびく痙攣し、そのまま頂点に昇りつめていく。
「あっ!・・・・・・・!!」
息が詰まり喘ぎ声も出ない。全身の筋肉がぎゅっと強ばり、背筋が限界まで仰け反ってしまう。

「ああっ!・・・・・・・・・・・!!・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」

 電撃のような絶頂が十数秒も続いた。
そしてそののち、糸がきれた人形のようにユカはシーツの上でくたりとしなだれた。
「ぁはっ!・・・・・・はぁ・・・・・はぁ、はぁ・・・」
「ふふっ、いい気味ね。彼を誘惑した罰よ」
ざまぁみなさい、とでも言うかのように冴は放心しているメイドを罵った。

『奪っちゃったんだ・・・・』
きつい絶頂感から開放され、ぼんやりした意識でユカは考えていた。
『あたしが場所を奪っちゃったんだ』

 その気は無くても健一郎の妻である彼女にとって
自分は『主人の側』という一番大切な場所を奪ってしまった存在なのだ。
たとえ表面でいがみ合っても、主人と離れたくないから彼女は怒っているのだ。
 だが、主人の側を彼女に譲り、自ら健一郎の側を離れるのは
今のユカにとって考えられないことである。

「奥様ぁ・・・・お願いします、何でもしますから
 ご主人様のお側に・・・お側にいさせてください」
ユカの心の底からの哀願を、冴は冷酷に受け流した。
「ふ・・・そうね。あなたの行動しだいじゃ、考えてあげてもいいわよ」

 彼の為なら従順になるこの娘は、思ったより言う事を聞きそうだ。
腹の中で冴はそんな算段を練っていた。
健一郎から財産屋敷全てを奪い、彼を自分の下僕にした時
意外と可愛いこのペットを側に置くのもいいだろう。
あくまでも冷静に冴はそんな思考をする。

「それじゃまず、あたしを楽しませてちょうだい」
「はい。わかりました・・・ご奉仕させてください・・・」
彼女の思惑も知らず、ユカは素直に冴の言う事に従った。

          ◆

 互いの秘部を舐め合うように重なった冴の下で
ユカは白い足の指先をひくひくと蠢かせていた。
つぷつぷ差し入れるしなやかな指先が、メイドの膣壁にある弱点を的確に責め
彼女を幾度もオルガスムスに昇らせる。
「んんっ!んっ!あふっ!あっ、また、またぁ!」
「もぅ?早いのね。これで何回目かしら?」
粘つく蜜の溢れる入り口が、つぷつぷ音を立てかき混ぜられ、こね回される。
繊細な指がぬめるひだ肉をひくひくはばたかせながら
舌先がクリトリスをちろちろ玩び、吸いついてユカを悦楽の高みへと導く。
「あっ!だめっ、あぅぅん!」

「あたしだって一回ぐらいはイきたいわ」
「はぅぅ!申し訳ありませっ、あっ!奥様ぁ・・・ああっ!」
何度もイかされているユカは、冴の下で懸命に奉仕をしてはいたが
絶頂の度に行為が中断され、思うように彼女を導けなかった。
「んんぅ!イくぅ!んっ!」
膝頭は天井へ向き、つま先立つ足の指がシーツにめり込み、びくびく痙攣する。
クリットを舌先でくすぐられながら、ユカがまたオルガスムスを迎えた。
「ああっ!・・・奥様ぁ・・・」

 脱力しきった後、何とか気力を振り絞ったユカが再び冴への奉仕を始めた。
赤らみ、汗ばんだ肌が少女の香りと淫臭の混じった匂いをさせ
しどけない下半身からシーツに広がった愛液の跡は、かなりの範囲をねっとり汚していた。

 初めのうちは満足していた彼女だったが、哀願もせず
ただ献身的につくすユカに対し、冴は次第にいらいらするものを感じ始めていた。
意志に反しての屈服ではなく、自ら望んで奉仕する彼女の姿は
冴の征服欲を満たさず、逆に不信感をつのらせるのだ。
「ねぇ?・・・なぜよ!なぜそんなに尽くしたいの?」
これまでかなりの絶頂を迎えたユカだったが
それでも彼女は冴への奉仕を止めようとはしなかった。

なぜこの娘はここまでできるのだろう?
どうしてここまで献身的に振る舞えるのだろう?
その理由が、冴には判らなかった。
「どうしてそこまでできるのよ!?」

「教えてやろうか?」
ふいにドアの方から声がした。
驚いた冴が顔を上げると、そこには彼女の夫、健一郎の姿があった。
腕を組み、いやらしい薄笑いなのか、優しい微笑みなのか
区別のつかない表情をさせている彼。
「あ・・・・・御主人・・・様?」
健一郎の声に気づき、弱々しい声でユカがつぶやく。

「教えてやるよ、ユカとお前の違いを」
ニヤリと笑った健一郎は、組んでいた腕を外すと
そのままゆっくりベッドの上の二人へ近づいていった。

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