前略、呑兵衛、喰兵衛様。
毎日寒いですね。でもこの寒さも峠を越えたようです。
冬の魚、珍味も旨味のピークを迎えました。
そして、少しづつ春の息吹を感じる魚、山菜も出始めました。
酒蔵のみなさんも、仕込みで一番忙しい時期でもあります。
各蔵元さんの新酒も出始め店のお酒の冷蔵庫もにぎやかです。
ぜひとも新酒のフレッシュな香味(若々しい糀の香り。)を山菜の香りと合わせて楽しみたいものです。
よく、料理とワインの相性の話を聞きますが、日本酒と料理はどうでしょう。
刺身と日本酒は合うのでしょうか?
和食には、焼・揚・蒸・生、色々と調理の方法がありますが、
天に乗せる香りの物、柚子、木の芽他、季節の物で味も様変わりしますよね。
まあ、肴を口の中でグチュグチュする方はいませんが、
固いスルメと日本酒を口の中で合わせた人は多いと思います。
塩辛などの臭みを和らげたり、ぬか漬けのお新香との相性の良さも衆知の事実です。
酒の肴と肴の酒とは、考え方がまったく違うと思います。
肴のための酒とは、その肴の旨味と協調性をもたなくてはなりません。
肴単体の旨味を、さらに美味しく引きだしてくれるような酒を、肴の酒と考えます。
しかし素材や料理の仕方によってオールマイティーなお酒はありません。
脂の強い肴には、濃醇な旨味の濃いお酒を。
淡泊な白身の刺身などには淡麗な軽い口当たりの酒をと思いがちですが、
お酒によっては、生臭い面が出てしまったり、
脂が口中にまとわりつくようなミスマッチをしてしまうことがあります。
燗酒にしますと割合いに良い場合があります。熟成酒にも同じ事が言えます
吟醸香の強い生酒には、肴も選ばなければならないと思います。
下の味雷最大限に働かせて自分なりに肴と酒の相性を確かめていくのです。
ただ漠然と吟醸酒をグイグイと飲むのも楽しいものですが。
(私はこのタイプです。)
美味しい吟醸酒が様々な顔で、肴との出会いを待ってます。
新しい味覚の発見者は、あなた自身です。
耳で聞いたり、本で見たりではありません。
自分自身の口の中で舌で感じるのです。
さあ、今夜は酒の肴を選びますか?それとも肴の酒ですか?。
(海山便りNo.21より)
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平成9年
師走 霜月 神無月