前略、呑べえ、喰いべえ様。
六月の古名、水無月は、暑熱のために泉が涸れて水がなくなるからとか、
あるいは、早苗がみなつきたる心とも言われています。
じめじめと蒸暑く過ごしにくい時季ですが、生ビールが旨くなってきますよね。
冷たい吟醸酒も「がんばった人」には、するすると喉ごしの良いものです。
肴は、ひと雨ごとに旨くなる鱧や鰯、鯵伊佐木、天然の岩牡蠣も鳥羽のちから出始めました。
暑い時期ですので、鱧はサット湯に通し氷水で冷やし、さっぱりと梅じょうゆで。
七〜八年ものの岩牡蠣は、殻をこじあけ四当分に切り分けます。
コリコリのひもの部分、養殖の牡蠣にはない大きな貝柱、ミルキーな肝の酸と渋み、生酒と良く合います。
特に、花垣七衛門生原酒、酒一筋生赤磐雄町、又は生詰原酒渡船、
本数の少ないお酒ですが、絶妙の取り合わせです。
牡蠣の磯の香りと若いフレッシュな生酒の香り、
それぞれで違うコハク酸の旨味の寄り合い、喉ごし、旨味の重複、
舌の上を酒が流したあとの磯の残り香と吟醸香、
海辺に蔵が浮いてるようです。
(海山便りNo.25より)
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平成9年
師走 霜月 神無月